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zoom RSS ネアンデルタール人はジブラルタルで24000年前まで生存?

<<   作成日時 : 2006/09/14 19:15   >>

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 ジブラルタル博物館のクライブ=フィンレイソン博士とその同僚たちによる、ジブラルタルのゴルハム洞窟での6年間の発掘・研究の結果、ネアンデルタール人が24000年前まで生存しており、この地域は、最後のネアンデルタール人の生息域だった可能性のあることが分かった、との報告が『Nature』に掲載され、マスコミでも報道されました。
http://www.nature.com/news/2006/060911/full/060911-8.html
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5343266.stm

 ゴルハム洞窟では、ネアンデルタール人のものと思われる、ナイフを含む103もの遺物が出土し、その大部分は28000年前のものでしたが、もっとも新しいものの年代は、24000年前となりました(もっとも古いものは33000年前)。ゴルハム洞窟の近隣には、32000年前のものとされる現生人類の遺跡がありますから、イベリア半島南部では、ネアンデルタール人と現生人類とは、かなりの長期にわたって共存していたことになります。
 しかし、新C14法の導入と欧州の旧石器時代の実年代の見直しを提案し、今年になって古人類学界に衝撃をあたえたポール=メラーズ博士は、試料のわずかな汚染により、年代の数値が数千年新しく出てしまう可能性を指摘し、ゴルハム洞窟の大部分の遺物の年代は31000〜30000年前頃ではないか、としています。

 フィンレイソン博士は、ジブラルタルの周囲の山々が、この地域のネアンデルタール人にとって保護壁となったこと、欧州が寒冷化する中で、この地域は地中海性気候をたもち、オリーブのような植物資源や、鹿のような哺乳類や、ムラサキイガイのような海産物を利用できたことなどからして、この地域はネアンデルタール人にとって理想的だったのではないか、と指摘しています。
 この報告書の共同執筆者で、著名な古人類学者であるクリス=ストリンガー博士は、現生人類が近くにいても、ネアンデルタール人が暮らしていけるだけ環境に適応していたことを示し、ネアンデルタール人絶滅の理由を探る重要な手がかりとなるだろうが、両者にどれだけの接触があったかは、現時点では依然として不明確だ、と指摘しています。
 ただ、ネアンデルタール人絶滅の様相として、じゅうらい考えられていたような、現生人類との混血による消滅・現生人類との資源獲得競争に敗れての消滅・現生人類による殺戮という諸説のような、現生人類の侵入が即ネアンデルタール人の消滅を意味した、といった単純なものではなく、長期の共存も認められるかなり複雑なものだろう、とストリンガー博士は指摘しています。

 この複雑なネアンデルタール人絶滅の様相の解釈の一つとして、気候変動の影響を重視するものがあります。ネアンデルタール人は、何度も気候変化を切り抜けてきたのですが、3万年前の厳しく急速な気候変化は、欧州北部でとくに影響が大きく、ネアンデルタール人と現生人類とのバランスを崩し、ネアンデルタール人は絶滅するにいたったのではないか、というわけです。
 ジブラルタルにおいては、その地理的位置などから、この30000年前の気候変動の悪影響はそれほどではなかったのですが、24000年前の急激な気温低下とそれに伴う資源の減少は、ジブラルタルにおいても深刻で、けっきょくネアンデルタール人は耐えられず、絶滅したのではないか、というわけです。

 BBCの報道だと、ネアンデルタール人は35000年前に絶滅し、今回の発見はネアンデルタール人の生存年代を一気に繰り下げるものとなった、とされているのですが、ムスティエ式石器が出土していることから、ネアンデルタール人の遺跡とされるスペイン南部のザファラヤ洞窟の遺物は27000年前、クロアチアのヴィンディヤ洞窟出土のネアンデルタール人骨は28000年前とされていますから、BBCがいうほどには大きく年代が繰り下がるわけではありません。
 ただ、『Nature』のサイトでも触れられていて、上のほうでも述べましたが、現在、欧州の旧石器時代の実年代は、新C14法の開発により全面的に見直す必要が出てきましたから、この実年代をそのまま他の遺跡のじゅうらいの測定年代と比較して、ネアンデルタール人と現生人類との関係を考察することには慎重であるべきでしょう。
 実年代の問題については、今後の研究成果を待つしかありませんが、もし24000年前までイベリア半島でネアンデルタール人が生存していたとなると、ポルトガルで発見された25000年前の4歳児の人骨を、ネアンデルタール人と現生人類との混血の証拠とする、ネアンデルタール人研究の世界的権威であるエリック=トリンカウス教授の解釈は、あるいは妥当なのかもしれません。
 それはさておくとしても、ネアンデルタール人と現生人類との関係が、その曖昧な実年代の問題も含めて、きわめて複雑であり、すぐに解決するような問題ではないことは間違いなく、その詳細は未来永劫判明することはないのでしょう。

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『そして最後にヒトが残った ネアンデルタール人と私たちの50万年史』
 クライブ=フィンレイソン著、上原直子訳、近藤修解説で、白揚社より2013年11月に刊行されました。原書の刊行は2009年です。フィンレイソン博士のチームの研究の一つを、過去にこのブログで取り上げたことがあります(関連記事)。フィンレイソン博士はジブラルタル博物館の館長で、ジブラルタルのゴーラム洞窟の調査を長年続けており、末期ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)研究の第一人者的存在です。本書の特徴は、以下の5点にまとめられると思います。 ...続きを見る
雑記帳
2013/12/01 00:00
イベリア半島で他地域よりも遅くまで生存していたネアンデルタール人
 これは11月21日分の記事として掲載しておきます。イベリア半島における後期〜末期ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の年代に関する研究(Zilh&#227;o et al., 2017)が報道されました。イベリア半島はネアンデルタール人終焉の有力候補地で、24000年前頃まで生存していた、との見解(後期絶滅説)も提示されています(関連記事)。イベリア半島は末期ネアンデルタール人にとって待避所になっていたのではないか、というわけです。もっとも、ネアンデルタール人... ...続きを見る
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