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zoom RSS 『ヒストリエ』4巻雑感

<<   作成日時 : 2007/08/17 07:38   >>

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 『ヒストリエ』の3巻までの粗筋はすでに紹介しましたので、
http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html
今回は、4巻の粗筋を紹介しつつ雑感を述べていくことにします。

 フィレタイロス家の当主の長男であるダイマコスは、パフラゴニアのボアの村を訪れますが、これは村を攻めるための偵察でした。一人ティオスに残って偵察を続けるエウメネスも、野心家のダイマコスが村を攻めようとしていることに気づきますが、そのエウメネスの不在中に、ダイマコスの弟で穏健なテレマコスが村を訪れ、兄の企みを村人に話し、村人が退去することで争いを回避しようとします。しかし村人はこの提案を拒否し、ついにダイマコス率いる軍勢が村に攻めてきます。
 エウメネスは村人に罠をしかけさせ、自らは村人に襲われたギリシア人を装って、ダイマコスの陣中に助けを求めます。エウメネスの説明を信頼したダイマコスは、エウメネスから村の防衛網の弱点を聞いて攻めかけますが、罠にはまって死んでしまい、総大将を失ったダイマコスの軍勢は退却します。

 戦いが終結してから一ヶ月後、フィレタイロス家のテレマコスと病身の当主とが村を訪れ、和議が成立します。前に村を訪れたときにサテュラを見初めていたテレマコスは、和睦の証としてサテュラを妻に迎えることを村人の前で宣言しますが、すでにエウメネスと深い仲になっていたサテュラは断ろうとします。ここではじめて、テレマコスはエウメネスが村の人間であり、自分たちが騙されていたのだと気づき、激怒します。なぜエウメネスはテレマコスの前に姿を現したのでしょうか。家に隠れていればいいのに、賢明なエウメネスにしては信じられないような失敗でした。
 エウメネスは、自分が全責任を負うことにし、村人は平和主義的であることと、数々の策謀は自分一人で立案したことを強調し、元々自分はこの村の人間ではなかったのだ、とテレマコスに明かします。村を去ることを決意したエウメネスにたいし、自分も連れて行ってくれ、とサテュラは言います。しかしエウメネスは、トロイア戦争の契機となった王子パリスとヘレネのように、多くの人々の人生を踏み台にして二人だけの幸せをつかむような生き方は、自分たちにはできないだろうと言い、サテュラも同意します。けっきょく、エウメネスは村を去り、サテュラはテレマコスに嫁ぐことになります。

 エウメネスは故郷のカルディアに戻ることにし、物語は新たな展開を迎えるとともに、ここでようやく作品の冒頭の年代に追いつくことになります。アケメネス朝トロイアス州総督の妻のバルシネは、スパイ容疑のアリストテレスを追って、鯨の生態について訊くという名目でレスボス島の生物研究所を訪ねます。バルシネは、ここにアリストテレスがいるかもしれないし、たとえいなくても、スパイ疑惑を裏付ける証拠があるのではないか、と考えたのです。
 バルシネが研究所を訪ねると、一人の男性が出迎えます。男性はバルシネを大歓迎し、バルシネに飲み物を出します。自分には鮫や鯨を軽く吹き飛ばすほどの大きな力がある、などとおかしなことを言う男性に失望したバルシネですが、男性から、アリストテレスはレスボス島にはおらず、陸路をとっているだろうと聞くと、すぐにアリストテレスの追跡に向かいます。研究所で出された飲み物を飲んだバルシネは、船上で気分の悪さを感じます。
 いっぽうバルシネが去った後、研究所の男性は「またおいでなさい!いや・・・・・・貴女は必ずここに帰っていらっしゃる!!お待ちしています!!何年でも!何十年でも・・・!!」と謎めいた言葉を発します。この後、エウメネスとアリストテレスを取り逃がした場面へと移り、1話の終わりの場面と接続することになります。バルシネが、アリストテレスの行き先はカルディアだろう、と言うところで4巻は終了です。

 エウメネスには冷酷なところがあり、それはエウメネスの賢明さとも関連しているのでしょうが、戦いが中心に描かれた4巻でも冷酷さを示した場面が何度か描かれ、エウメネスの怖さはサテュラにも指摘されています。しかしながら、エウメネスには仲間想いのところもあり、それが多数の人々(村人)の幸福とエウメネス自身・サテュラとの不幸につながっており、エウメネスはなかなか魅力的な人物と言えます。
 主人公の人物造形に成功していることが、『ヒストリエ』の面白さにつながっているように思われます。エウメネスとサテュラの別れはたいへん悲しいものでしたが、サテュラの再登場はあるのでしょうか?サテュラもなかなか魅力的なキャラになっているだけに、どこかで再登場があればいいな、と思います。

 今後、エウメネスはどのようにマケドニアとアレクサンドロス大王とに関わっていくのか、その前に、帰還した故郷でエウメネスは何をしようとするのか、ということも気になりますが、もっとも気になるのは、レスボス島の生物研究所の男性です。この男性のバルシネにたいする言動は、間違いなく伏線だろうと思うのですが、あまりにもおかしな言動なので、この男性が何者なのか、どのように後の話と結びつくのか、現時点ではさっぱり分かりません。もしかすると、男性は美しいバルシネを生物研究所の標本にするつもりでしょうか?
 早くも次の展開が気になるところですが、最近は掲載誌でも休載が多いようで、5巻が発売されるのはずいぶんと先になりそうですので、気長に待つことにします。やはり、アシスタントがいないとなかなか大変なのだろうな、と思います。まあ、一人でないとやりづらいという作者さんもいるでしょうし、仕方のないことなのでしょう。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
岩明均『ヒストリエ』5巻発売(講談社)
 今年の2月に5巻が刊行されていたことを、不覚にも最近になって知り、ただちに購入しました。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて述べています。 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html ...続きを見る
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2009/04/10 00:01
岩明均『ヒストリエ』第6巻発売(講談社)
 待望の第6巻が刊行されました。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html 第5巻の内容は以下の記事にて述べています。 http://sicambre.at.webry.info/200904/article_10.html ...続きを見る
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2010/05/25 00:00
岩明均『ヒストリエ』第7巻発売(講談社)
 待望の第7巻が刊行されました。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html 第5巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200904/article_10.html 第6巻の内容は以下の記事にて述べ... ...続きを見る
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2011/11/29 00:00
岩明均『ヒストリエ』第8巻発売(講談社)
 これは8月26日分の記事として掲載しておきます。待望の第8巻が刊行されました。実に1年9ヶ月振りの新刊となります。第3巻までの内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200707/article_28.html 第4巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.info/200708/article_18.html 第5巻の内容は以下の記事にて、 http://sicambre.at.webry.inf... ...続きを見る
雑記帳
2013/08/23 22:25
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 待望の第9巻が刊行されました。実に1年9ヶ月振りの新刊となります。第8巻は、マケドニア軍の遠征に加わっていたエウメネスが、マケドニアの首都のペラに帰還するところで終了しました。第9巻は、エウメネスがエウリュディケと一晩を過ごし、起床する場面から始まります。遠征前からなのか、明示されていませんが、ともかくエウメネスとエウリュディケとの間には肉体関係があるようです。エウリュディケがまだ眠っているなか、エウメネスは居候先でエウリュディケの叔父である将軍のアッタロスとの会話を想起します。 ...続きを見る
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2015/05/28 00:00
岩明均『ヒストリエ』第10巻発売(講談社)
 これは4月2日分の記事として掲載しておきます。待望の第10巻が刊行されました。実に1年10ヶ月振りの新刊となります。第9巻は、紀元前338年、アテネ・テーベなどの連合軍とマケドニア軍とのカイロネイアの戦いがまさに始まろうとし、一番手を自分と替わってくれ、とクラテロスに頼み込んだものの断られたアレクサンドロスが、副将の下知だ、と言うところで終了しました。第10巻は、パルメニオンがクラテロスに、アレクサンドロスの指示に従うよう、命じるところから始まります。アレクサンドロスは愛馬ブーケファラス... ...続きを見る
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