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zoom RSS デニソワ人の核DNA

<<   作成日時 : 2010/12/24 00:00   >>

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 デニソワ人の核DNAの塩基配列を解読した研究(Reich et al., 2010)が報道され、要約を読みました。デニソワ人については、48000〜30000年前頃の断片的な指の骨から得られたミトコンドリアDNAの解析結果がすでに発表されており(関連記事)、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)とも現生人類(ホモ=サピエンス)とも異なる系統の人類である可能性の高いことが明らかになっています。この研究では、その断片的な指の骨から核DNAが抽出され、解析されるとともに、現代のアフリカ・中国(漢人)・パプア・フランス人のそれと比較されています。

 これらの比較の結果、デニソワ人・ネアンデルタール人・現代人の共通祖先から現代人の系統とデニソワ人・ネアンデルタール人の共通祖先の系統が分岐し、その後にデニソワ人とネアンデルタール人の系統が分岐した、という進化系統樹が描かれました。ミトコンドリアDNAの解析・比較では、デニソワ人・ネアンデルタール人・現代人の共通祖先からデニソワ人の系統と現代人・ネアンデルタール人の共通祖先の系統が分岐し、その後に現代人とネアンデルタール人の系統が分岐した、という進化系統樹が描かれましたから、ミトコンドリアDNAと核DNAとでは、これら3系統の人類の進化系統樹が異なるということになります。まだ要約しか読んでいないので、全文を読んでみないとこの違いについては判断ができません。

 いずれにしても、同じくデニソワ洞窟で発見された歯が断片的な指の骨とは異なる個体のものであり、その歯から得られたミトコンドリアDNAが指の骨から得られたそれとよく似た配列で、形態的にはネアンデルタール人とも現生人類とも派生的特徴を共有していないことから、デニソワ人がネアンデルタール人とも現生人類とも異なる系統の人類であることはほぼ間違いないでしょう。デニソワ人の進化系統樹がどちらに落ち着くにしても、よほど特殊化していないかぎり、デニソワ人はホモ属の人類ということになるでしょう。

 また、デニソワ人と現代人との核DNAの比較から、メラネシア人のゲノムの4〜6%はデニソワ人に由来すると推測されています。このことから、デニソワ人は後期更新世のアジアに広く存在した可能性が示唆されています。もっとも、デニソワ人の居住地域を経由した一部の現生人類集団が、デニソワ人と混血し、その一部の子孫がメラネシアへと進出したとも考えられますから、デニソワ人が広範囲に存在していたか否か、現時点では断定の難しいところです。今後、デニソワ人のゲノム解読がさらに進展し、より多くの現代人やネアンデルタール人との比較が進めば、デニソワ人の存在範囲や進化系統樹における位置づけについても、今よりも詳しく分かるでしょう。


参考文献:
Reich D. et al.(2010): Genetic history of an archaic hominin group from Denisova Cave in Siberia. Nature, 468, 1053-1060.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09710

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