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zoom RSS 改めて確認されたネアンデルタール人と現生人類との交雑(追記有)

<<   作成日時 : 2014/01/31 00:00   >>

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 今日はもう1本掲載します。ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)と現生人類(ホモ=サピエンス)との交雑について、1004人の現代人のゲノムを利用した研究(Sankararaman et al., 2014)と、379人のヨーロッパ人および286人の東アジア人の全ゲノム配列を利用した研究(Vernot, and Akey., 2014)が報道されました。これらの研究はオンライン版での先行公開となり、『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。この2つの研究は、現代人のゲノムにネアンデルタール人由来の大きな領域を特定したという点で、意義深いもののようです。じゅうらいの諸研究にて、非アフリカ系(この場合のアフリカとは、サハラ砂漠以南を指します)現代人のゲノムにはネアンデルタール人由来のものがわずかながら存在することが明らかになっています。

 『ネイチャー』論文(Sankararaman et al., 2014)では、非アフリカ系現代人はケラチン繊維に影響する遺伝子をネアンデルタール人から高頻度に継承していることが明らかになりました。また現代人は、病気発症の危険性を高める複数の対立遺伝子も、ネアンデルタール人から継承していることが明らかになりました。逆に、ネアンデルタール人由来のものが少なく、排除されたように思われる現代人のゲノム領域もありました。それは、精巣に関わる遺伝子領域やX染色体上においてです。X染色体上のそうした領域については、男性雑種不稔性遺伝子がとくに密集していると、多様な種の研究から知られています。このことから現代人のゲノム領域において、ネアンデルタール人由来のものが、継承されるだけではなく減少した場合も存在するのは、ネアンデルタール人と現生人類の交雑により誕生した男性の繁殖能力が、ネアンデルタール人由来の遺伝子により低下したことが一因ではないか、と推測されています。

 『サイエンス』論文(Vernot, and Akey., 2014)では、非アフリカ系現代人の肌の表現型に関わる遺伝子に、ネアンデルタール人由来のものがあると指摘され、これは現生人類にとって適応的だったのではないか、と推測されています。また、『ネイチャー』論文で明らかになった事実と似ていることとして、発話に関係するFOXP2遺伝子を取り囲んでいる膨大なゲノム領域では、現代人のそれにネアンデルタール人由来のそれがまったく見られないことも明らかになりました。この領域をネアンデルタール人から継承した場合、現生人類固有の領域を継承していた場合と比較して、適応度・繁殖能力が低下した可能性も考えられます。

 ケラチン繊維など現生人類がネアンデルタール人から継承したと推定される遺伝子は、現生人類にとって適応的だったのではないか、と研究者たちは推測しています。肌に関係する遺伝子‘POU2F3’は東アジア人のうち約66%で、体色と関係が強い遺伝子‘BNC2’はヨーロッパ人の70%で見つかっているそうです。アフリカ起源の現生人類が、より寒冷なユーラシアに進出したさい、すでにユーラシアに適応していたネアンデルタール人との交雑により、アフリカよりも寒冷な気候への適応度を高めたのではないか、というわけです。しかし、この仮説はまだ推論に止まっているので、たとえばケラチン繊維に影響するネアンデルタール人の遺伝子が、どのように現生人類に利益をもたらしたのか、研究を進める必要がある、とも研究者たちは指摘しています。

 興味深いのは、ネアンデルタール人から現生人類へと継承されなかったというか、除去されただろうゲノム領域です。男性の繁殖能力に関わってくる遺伝子については、すぐに納得できます。問題はFOXP2遺伝子を取り囲んでいる膨大なゲノム領域についてです。現代人のゲノムにおいてネアンデルタール人由来のそれが発見されていないということは、ネアンデルタール人由来のそれにたいして強い負の淘汰が働いた可能性も考えられます。そうだとすると、ネアンデルタール人と現生人類との間には、言語表現能力などにおいて有意な違いがあったのかもしれません。

 ネアンデルタール人と現生人類との交雑により生まれた男性に繁殖能力の低下があったとすると、ネアンデルタール人と現生人類との交雑は、現代人のゲノムに残るネアンデルタール人由来の塩基配列の頻度から想定されるよりも、ずっと頻繁に生じていた可能性があるでしょう。現代の非アフリカ系現代人にネアンデルタール人由来のDNAが見られることから、ネアンデルタール人と現生人類が交雑したのは西アジアのどこかだった可能性が高いでしょう。両者の興隆は短期間の稀な出来事ではなく、一定以上の期間の恒常的なものだったのかもしれません。


追記(2014年3月20日)
 この論文が『ネイチャー』本誌に掲載されたので、以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。


進化遺伝学:現生人類のゲノム内にあるネアンデルタール人由来配列の全体像
進化遺伝学:ネアンデルタール人の遺伝子は今
 現代人のゲノムには、ネアンデルタール人の痕跡が含まれている。しかし、ネアンデルタール人に由来するDNAはヒトゲノム全体に均一に分布しているのだろうか、それとも場所によって集中しているといった不均一な分布をしているのだろうか。S Sankararamanたちは、ケラチンフィラメント(髪などの成分)に影響する遺伝子群を多く含むヒトゲノム領域内に、ネアンデルタール人由来のDNAが比較的多く存在することを明らかにしている。これは、現生人類がアフリカ以外のより寒冷な環境に適応する際にこうしたDNAが役立ったことを示唆している。しかしマイナス面もあり、ネアンデルタール人由来の対立遺伝子の多くが疾患リスクと関連していた。ヒトゲノムの他の領域には、ネアンデルタール人由来の対立遺伝子があまり含まれておらず、進化の過程で積極的に排除されたことを示唆している。これらの「失われた」遺伝子のうちのいくつかは精巣で発現し、X染色体上にあるため、ネアンデルタール人由来のDNAが現生人類の遺伝的背景に組み込まれた際にヒトの生殖能力を低下させたと考えられる。



参考文献:
Sankararaman S. et al.(2014): The genomic landscape of Neanderthal ancestry in present-day humans. Nature, 507, 7492, 354–357.
http://dx.doi.org/10.1038/nature12961

Vernot B, and Akey BV.(2014): Resurrecting Surviving Neandertal Lineages from Modern Human Genomes. Science, 343, 6174, 1017-1021.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1245938

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