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zoom RSS 人類の肌の色と皮膚癌の関係

<<   作成日時 : 2014/03/13 00:00   >>

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 人類の肌の色と皮膚癌の関係についての研究(Greaves., 2014)が報道されました。人間の肌の色は、高緯度地帯では薄い方が、低緯度地帯では濃い方が有利とされています。これは、紫外線量とビタミンDの合成と関係しています。肌の色は、薄い方が紫外線を通しやすくなります。人間は紫外線を浴びて体内でビタミンDを合成するので、紫外線量が少なくなる高緯度地帯では、ビタミンD合成のために肌の色が薄い方が有利となります。ビタミンDが不足すると、くる病を発症します。逆に低緯度地帯では紫外線量が多いので、肌の色が濃くてもビタミンD合成の妨げにはならず、命に関わるような汗腺の損傷や皮膚の炎症を抑えるためにも、肌の色が濃い方が有利となります。

 現代人は高緯度地帯の集団ほど肌の色が薄く、低緯度地帯の集団ほど肌の色が濃い傾向にあります。ただ、高緯度地帯では肌の色が薄くないと生存が難しいのかというとそうでもなく、生肉を食べる習慣があればビタミンDを摂取できるので、それほど肌の色が薄くない高緯度地帯の集団もいます。現代では肌の色の薄い人の多いヨーロッパにおいても、中石器時代にはまだそうした人は少なかったのではないか、と推測されています(関連記事)。ヨーロッパで肌の色を薄くする遺伝子が広まったのは、ビタミンD合成のためだと推測されており、その要因としては狩猟よりも農耕への依存度が高まったことが考えられます。

 ただ、この研究によると、ビタミンD不足によるくる病はヨーロッパにおいて肌の色を薄くする遺伝子を定着させた選択圧にはならなかった、との見解も提示されているようです。新石器時代にはおもに魚から充分なビタミンDが摂取できただろうし、くる病が顕著になるのは、産業化・都市化の時代、とくに19世紀だ、というわけです。この見解によると、肌の色の薄さをもたらした選択圧として、肌の色が濃い場合よりも寒さと凍傷に耐えられることが挙げられています。ただ、新石器時代にヨーロッパで農耕が拡大していくなかで、どれだけの人がじゅうぶんな生肉を摂取していたのかというと、疑問が残ります。ヨーロッパで肌の色を薄くする遺伝子が広まったのは、(アフリカと比較して)寒冷な気候と少ない紫外線量のためと考えるのが妥当なところでしょう。

 この研究では、肌の色に関わるメランコルチン1受容体の遺伝子が分析されています。現代のアフリカ系の人々やパプアニューギニア人のメランコルチン1受容体遺伝子においては、ヨーロッパ人のそれと比較して、肌の色を濃くする(色素形成量が多い)機能を損なうような変異が見られないことが指摘されています。これは強い選択圧が働いていたからだろう、とこの研究では指摘されています。この研究では、その選択圧として皮膚癌が推測されています。

 紫外線を大量に浴びると、皮膚癌を発症しやすくなります。しかし、皮膚癌は高齢になってから発症するとこれまで考えられてきたため、低緯度地帯で濃い肌の色を維持する選択圧としては弱いのではないか、というのが有力な見解でした。この研究では、アフリカおよび中央アメリカの低緯度地帯のアルビノ(先天性白皮症)患者における癌発生率および致死率についてのデータが検証され、若い患者に致命的な皮膚癌が発症していることが確認されました。そのためこの研究では、低緯度地帯においては、皮膚癌が肌の色を濃くする(濃い肌の色を維持する)強い淘汰圧になったのではないか、との結論が提示されています。

 またこの研究では、現代人よりも体毛の濃いチンパンジーの肌の色が薄い(顔面や手のような体毛がないか薄い箇所の肌の色も、幼児の時点では薄い、と指摘されています)ことから、人類の体毛が現在よりも濃かった時代には、人類の肌の色は薄かったのではないか、と推測されています。この研究では、300万〜200万年前頃のアフリカ東部の初期人類において、体毛が劇的に薄くなるような変異が生じたのではないか、と推測されています。体毛が薄くなったことはサバンナにおいて、発汗・熱損失の促進など体温調節に有利なので、適応的利点となっただろう、とこの研究では指摘されています。

 サバンナに進出し、体毛を失って肌に浴びる紫外線量の増えた人類には、肌の色を濃くするような強い選択圧が働いたのではないか、というわけですが、この研究は、肌の色を濃くするような遺伝子変異は遅くとも120万年前頃に生じた、とする先行研究を引用しています。この研究では、人類がサバンナに進出した時期と、120万年前頃とでは大きくかけはなれているわけではない、と述べられていますが、軽視してよいほどでもないようにも思います。この研究では大まかに、200万〜100万年前の間に肌の色を濃くするような遺伝子変異が生じたのではないか、と推測されています。この研究で提示された仮説が基本的には妥当だとしても、人類の体毛が劇的に薄くなった時期と、肌の色を濃くするような遺伝子変異が生じた時期については、まだ曖昧なところがあるのは否定できず、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Greaves M.(2014): Was skin cancer a selective force for black pigmentation in early hominin evolution? Proceedings of the Royal Society B, 281, 1781, 20132955.
http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2013.2955

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