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zoom RSS Ian Tattersall「進化を加速したハンマー」

<<   作成日時 : 2014/11/10 00:00   >>

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 『日経サイエンス』2014年12月号の特集「人類進化 今も続くドラマ」(関連記事)第1部「我々はどこから来たのか」に掲載された解説です。碩学のタッターソル氏が、人類の進化を加速した要因について解説しています。タッターソル氏は、700万年間の人類の進化が、近縁の霊長類と比較してたいへん速かったことを強調しています。なぜ人類の進化は速かったのか、ということがこの解説の主題なのですが、本当に人類の進化が特異的に速いと言えるのか、疑問に思わないわけではありません。ただ、碩学の解説だけに、傾聴すべき点が多々あるとは思います。

 タッターソル氏は、人類の進化速度は700万年間一定だったのではなく、急激な進化の起きた短い期間と安定した長い期間とがある、と指摘します。人類に急激な進化が起きた最初の時期は200万年前頃の(異論の余地のない)ホモ属の出現した頃で、それまでの500万年間の進化速度は、他の霊長類とさほど変わらない、というのがタッターソル氏の見解です。ただ、200万年前頃の急速な進化の前提として、その60万〜50万年前頃の石器製作の開始も重視されています。

 人類における脳の拡大は、ヨーロッパのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)、東アジアのエレクトス(Homo erectus)、アフリカの現生人類(Homo sapiens)につながる各系統で独立に生じた、とタッターソル氏は指摘します。脳の拡大は人類の進化において有利に働き、それは生物学的側面と文化的側面との間の強い正のフィードバックのためだろう、というのがタッターソル氏の見解です。この好循環においては、人類はより賢くなり、その行動もより複雑になって、急速な進化が起きやすい、というわけです。

 ただ、タッターソル氏は別の要因も指摘しています。それは、更新世における気候変動の激しさです。これにより、気候条件の良化により拡大した人類集団が、気候条件の悪化により縮小することが珍しくありませんでした。そのため、人類集団はしばしば分断され、孤立して小規模化しました。このように集団規模が小さくなったことにより、遺伝的・文化的な革新は集団に急速に浸透していき、それが人類の進化の速さをもたらした要因ではないか、というのがタッターソル氏の見解です。大規模な集団では、遺伝的変異や技術的革新が浸透するには時間を要するし、そもそも定着できないかもしれない、というわけです。

 碩学のタッターソル氏の解説だけに、考えさせられるところが多く有益でしたが、一方で、上述した他の霊長類と比較しての人類の進化の速さとか、現生人類で発達した表象認知の最古の証拠は、南アフリカ共和国のブロンボス洞窟で発見された77000年前頃の線刻オーカーだ、とする見解には疑問が残りました。表象認知は現生人類の出現からかなり遅れて急速に出現する、との見解をタッターソル氏は提示していますが、10万年前頃のレヴァントの埋葬品の事例は、表象認知の証拠と言えるのではないか、とも思います。


参考文献:
Tattersall I. (2014)、『日経サイエンス』編集部訳「進化を加速したハンマー」『日経サイエンス』2014年12月号P70-75

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