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zoom RSS 36000年以上前のヨーロッパロシアの現生人類のゲノム

<<   作成日時 : 2014/11/08 00:00   >>

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 36000年以上前の現生人類(Homo sapiens)のゲノムについての研究(Seguin-Orlando et al., 2014)が報道されました。『サイエンス』のサイトでは解説記事が掲載されています。ナショナルジオグラフィックでも取り上げられています。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、ヨーロッパロシアにあるコステンキ−ボルシェヴォ(Kostenki-Borshchevo)遺跡群の一つであるコステンキ14(Kostenki 14)遺跡で1954年に発見された若い男性(以下、コステンキ人と省略)の人骨(尺骨)からDNAを抽出し、ゲノム配列を確定することに成功しました。この男性の年代は38700〜36200年前とされており、肌や目の色は濃いことが明らかになりました。解析された現生人類のゲノムとしては、現時点では2番目に古いものとなります。ちなみに、現生人類のゲノム配列として現時点で最古のものは、西シベリアの45000年前頃の人骨から得られています(関連記事)。

 ゲノム解析の結果、コステンキ人と遺伝的に近縁なのは、中央シベリアの24000年前のマリタ(Mal’ta)遺跡の少年(関連記事)・ヨーロッパの中石器時代の狩猟採集民・一部の現代西シベリア人・多くの現代ヨーロッパ人であり、現代東アジア人とはこれらの系統よりも遺伝的に疎遠であることが明らかになりました。このことから、西ユーラシア人と東アジア人とは36200年以上前に分岐したのではないか、と推測されています。また、コステンキ人のゲノムには、後のヨーロッパ新石器時代の中東起源の農耕民とも関連する領域も確認されました。この研究は、上部旧石器時代にヨーロッパから中央アジアまで局所的集団が多数存在し、それぞれの局所的集団が拡大と消滅を繰り返しながらも存続しているという状況を想定し、そうした中でヨーロッパ人が形成されていったのではないか、との見通しを提示しています。

 この研究に関して注目されているのは、今年(2014年)9月に公表された現代ヨーロッパ人の起源に関する研究です(関連記事)。その研究では、現代ヨーロッパ人は遺伝的にはおもに、全ヨーロッパ古代人の祖先である西ヨーロッパの狩猟採集民・上部旧石器時代シベリア人と遺伝的に近縁な古代北部ユーラシア人・中東起源の初期ヨーロッパ農耕民の3系統に由来している、と主張されています。これらの系統は個別にヨーロッパに進出し、新石器時代になってこの3系統が融合した、とされています。しかし、コステンキ人はこの3系統の遺伝子を全て有しており、この研究を率いたウィラースレヴ(Eske Willerslev)博士は、コステンキ人を「純粋なヨーロッパ人」と述べています。ヨーロッパ人の遺伝的形成は、じゅうらい想定されていたよりもずっと早かったのではないか、というわけです。

 上記報道や解説で強調されているのが、コステンキ人の系統は遺伝的に未知だった系統と交雑した、ということです。この遺伝的に未知の系統は、36000年以上前のコステンキ人の系統との少ない遺伝的交流を除いて、おそらく上部旧石器時代の中東で3万年以上ヨーロッパの現生人類集団とはほぼ交流なく生き延び、氷期が終わった後に農耕を始めて、ヨーロッパに進出したのではないか、と推測されています。上記報道では、ヨーロッパと中東は地理的に近いように見えるが、ある種の地理的障壁があったのではないか、と指摘されています。また、この遺伝的に未知の系統は、上部旧石器時代の間、たとえばザグロス山脈のような退避所で過ごしたのではないか、と推測されています。

 この研究にたいして、現代ヨーロッパ人の起源に関する研究に加わっていたライヒ(David Reich)博士とクローゼ(Johannes Krause)博士は、コステンキ人のゲノム配列が比較的低精度であることから、もっと高精度のゲノム配列を得て試料汚染の可能性を除外することの必要性を指摘しています。またライヒ博士は、38700〜36200年前のコステンキ人が現代ヨーロッパ人の遺伝子を構成する主要な系統をすべて有していたとしても、同時代の他のヨーロッパ人がそうだったとは限らない、と注意を喚起しています。現代ヨーロッパ人の起源に関する研究では、北部・西部のヨーロッパ人には、ずっと後まで東ヨーロッパからシベリアにいたる草原地帯からの遺伝子流入はなかっただろう、というのがライヒ博士の見解です。

 コステンキ人のゲノムには、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来と推定されているDNAも確認されました。その割合は現代ユーラシア人よりも1%以上多く、上記報道では、ネアンデルタール人と現生人類との交雑は、ユーラシアの現生人類集団が東西に分離する前のことで、54000年前頃の中東で起きたのではないか、との推測が述べられています。しかし、西ユーラシアの現生人類とネアンデルタール人とは、その交雑の後に10000年間ほどは共存していたにも関わらず、さらなる交雑はなかったようだ、とも指摘されています。ネアンデルタール人の集団が急速に減少した可能性を研究者たちは想定していますが、まだ確かなことは分かっていません。ただ、まだ検出されていないだけで、ユーラシアの現生人類集団が東西に分離した後に、ヨーロッパにおいてさらなるネアンデルタール人と現生人類との交雑が起きた可能性もあるのではないか、と私は考えています。


参考文献:
Seguin-Orlando A. et al.(2014): Genomic structure in Europeans dating back at least 36,200 years. Science, 346, 6213, 1113-1118.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aaa0114

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