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zoom RSS 現代人と変わらないようなアフリカヌスの物をつかむ能力(追記有)

<<   作成日時 : 2015/01/24 00:00   >>

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 アウストラロピテクス=アフリカヌス(Australopithecus africanus)の柱骨の構造についての研究(Skinner et al., 2015)が報道されました。『サイエンス』のサイトには解説記事が掲載されています。現生人類(Homo sapiens)にもネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)にも、力強く精確に物を握る能力が備わっています。これにより、人間はさまざまな道具を器用に製作することが可能となっており、人類の進化史において重要な変化だった、と言えるでしょう。

 この能力は、形態学的には親指の対向性と深く関わっています。現代人と最も近縁な現生種であるチンパンジーにも、親指の対向性が認められます。しかし、親指が短すぎるといった問題のために、チンパンジーは現代人のように精確に物を握ることはできません。この能力を可能とする形態学的構造が人類の進化史においていつ出現したのか、まだ明らかではありません。

 この研究は、300万〜200万年前頃にかけてアフリカ南部に存在したアフリカヌス化石を分析し、アフリカヌスにも現代人のような柱骨の構造が認められることを明らかにしました。そのため、アフリカヌスも物を精確に握る能力が備わっており、アウストラロピテクス属が石を道具として用いていた、とする考古学的研究の証拠になるのではないか、とされています。こうした形態学的構造の出現は、じゅうらいの見解よりもずっと早かったのではないか、と指摘されています。

 現時点では、人類最古の石器はアフリカ東部における260万年前頃のものにまでさかのぼります。石器が骨よりもはるかに後世まで残りやすく、発見されやすいことを考えると、石器の使用が300万年以上前にまでさかのぼる可能性は低いように思います。ただ、人類が300万年以上前に石を道具として用いていたことを示唆する証拠はすでに提示されており(関連記事)、この研究は、人類が石を道具として器用に使えるだけの解剖学的構造をアウストラロピテクス属の時点で有していたことを示したという意味で、意義深いものだと思います。

 アフリカヌスはおそらく現代人の祖先ではないでしょうが、同時代の現代人の祖先系統の近縁種だった可能性は高いでしょう。そうすると、アフリカヌスと現代人の祖先系統との共通祖先の時点で、人類は(少なくともある程度以上)器用に物を握ることのできる解剖学的構造を有していた可能性が高くなります。この場合、石器製作も可能だったかもしれない形態学的構造の出現が、石器の製作よりも50万年以上さかのぼることになりそうです。

 これは、石器を製作できるだけの形態学的構造が先に出現し、そのための認知能力が後から出現した、ということなのかもしれません。ただ、野生では道具の使用が確認されていない(今後観察される可能性はありますが)ボノボが、飼育下では道具を使用することを考えると、石器を製作するだけの形態学的構造と認知能力を潜在的には有していても、石器を製作しなかった、という可能性も考えられます。

 ともかく、人類は300万年以上前から石を道具として器用に使えるだけの形態学的構造を有しており、ある程度以上の頻度で石を道具として使っていたのでしょう。そうした中から、やがてもっと効率的に石を使うために、石器の製作が始まったのではないか、と思います。最初の石器製作者がどの人類系統なのか、定かではありませんが、ホモ属の祖先である可能性が高いように思います。


参考文献:
Skinner MM. et al.(2015): Human-like hand use in Australopithecus africanus. Science, 347, 6220, 395-399.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1261735


追記(2015年1月28日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。

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