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zoom RSS 高橋章司「翠鳥園遺跡と豊成叶林遺跡にみる新人の石器製作の学習行動」

<<   作成日時 : 2015/01/26 00:00   >>

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 西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人2─考古学からみた学習』所収の論文です(関連記事)。本論文は、大阪府羽曳野市にある後期旧石器時代の石器製作址である翠鳥園遺跡の分析を中心に、鳥取県大山町にある同じく後期旧石器時代の豊成叶林遺跡(翠鳥園遺跡より古く、放射性炭素年代測定法では較正年代で3万年前頃)との比較から、現生人類(Homo sapiens)に共通しているかもしれない学習行動を検証していきます。

 翠鳥園遺跡では21000点の石器と剥離物が発見されています。石材はすべてサヌカイト(讃岐岩)で、二上山周辺の原産地とは5kmほど離れています。石材がすべてサヌカイトで、石器製作技術もすべて瀬戸内手法なので、石材の質や剥離技術による差を考慮する必要はなく、石器製作技術の習熟度を推定することができる、と本論文は指摘しています。

 本論文は翠鳥園遺跡の石器群の分析から、その学習行動の特徴を次のようにまとめています。学習は基本的に放任されるものの、作業全体は熟練者が制御しています。学習者には平等に1回ずつの指導の機会があり、その内容は学習上位者ほど厚く、上位者の技量の向上が優先されます。上位者には作業のかなりの部分が任されており、これは集団としての技術継承の準備が意図され、重視された結果だろう、と本論文は推定しています。

 豊成叶林遺跡の石器群の石材は、約50km離れた花仙山産の玉髄です(1点だけ、隠岐原産の黒曜石が出土しています)。そのため、翠鳥園遺跡のように簡単に石材を補充できません。本論文は、豊成叶林遺跡の石器群の分析から、技量の速成が意図されていたのではないか、と推測しています。初級者に良い石材を与えて放任することで、早く一人前になることを促したのではないか、というわけです。また、石材が複数回に分けて使われていることから、経済性が重視されていたのではないか、とも指摘されています。こうした特徴は、豊成叶林遺跡の集団が小規模で、石材を容易に調達できなかったからではないか、と本論文は推測しています。

 翠鳥園遺跡と豊成叶林遺跡とでは、そうした条件に起因すると考えられる石器製作・およびその学習行動の違いもあるものの、共通点もあり、それが現生人類の石器製作における学習行動の一般的な特徴なのではないか、と本論文は推測しています。その特徴とは、放任を基本とする「自習」、熟練者による全体の制御、重要作業での熟練者の責任、集団としての技術継承の優先、長い学習期間です。また本論文は、石器資料のうち半分近くが学習者の所産である可能性を指摘し、これまでの石器研究を学習行動の観点から再検討する必要があるのではないか、と提言しています。


参考文献:
高橋章司(2014)「翠鳥園遺跡と豊成叶林遺跡にみる新人の石器製作の学習行動」西秋良宏編『ホモ・サピエンスと旧人2─考古学からみた学習』(六一書房)P44-56

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