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zoom RSS ジャワ島の新たなエレクトス化石とエレクトスの区分

<<   作成日時 : 2015/06/09 00:00   >>

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 取り上げるのがたいへん遅くなってしまいましたが、ジャワ島中央部のソロ盆地(Solo Basin)のサンギラン(Sangiran)遺跡で発見された新たな人骨(上顎)と、既知のエレクトス(Homo erectus)およびハビリス(Homo habilis)人骨とを比較した研究(Zaim et al., 2011)が公表されました。この新たなエレクトス化石は2001年4月22日に発見され、「Bpg 2001.04」と命名されました。「Bpg 2001.04」の発見されたバパン(Bapang)層の2m上の軽石普通角閃石(pumice hornblende)の年代は、アルゴン-アルゴン法年代測定で151万±8万年前となります。

 サンギラン遺跡では、バパン(Bapang)層およびその下のサンギラン層から、80個以上の更新世前期のエレクトス化石が発見されています。サンギラン層の上部のエレクトス化石の年代は、東南アジアでは最古となる166万〜157万年前頃です。その頃のサンギラン地域は淡水湖岸の湿地環境であり、サバンナ植生で、水生もしくは半水生の脊椎動物(ワニ・カメ・魚など)がいました。その後、160万〜150万年前頃の間に、火山堆積物が大量に流れてきて、多くの砂州と浅くて豊富な水路のある環境に変わりました。浸水地域では灌木が散在し、台地には森林地帯が広がったようです。この時代にはヒョウや霊長類などが存在していました。

 本論文は、この「Bpg 2001.04」も含めてサンギランの更新世前期のエレクトスの上顎を、中国の周口店(Zhoukoudian)のエレクトス・「西方」のエレクトス・アフリカのハビリス(Homo habilis)の上顎(歯列も含めて)と比較しています。「西方」のエレクトスとは、更新世前期のアフリカおよびグルジアのドマニシの化石です。なお、ドマニシの更新世前期の化石群については、エレクトスではなくゲオルギクス(Homo georgicus)として独自の種に分類する見解も提示されています。

 この分析・比較の結果、「Bpg 2001.04」はサンギランの他のエレクトス化石と強く類似していることが明らかになりました。このサンギランのエレクトス化石群との類似性の強さは、「西方」エレクトス化石→ハビリス化石→周口店化石の順になります。これは、アフリカ起源のエレクトスが東方へ進出し、南北に別れて東南アジアのエレクトスと北東アジアのエレクトスになった、とする仮説と整合的ではありません。サンギランのエレクトス化石群が、周口店のエレクトス化石群よりも「西方」エレクトス化石群やハビリス化石群の方に類似している、というこの分析・比較結果について、本論文は以下のような見解を提示しています。

 本論文で分析・比較対象となった化石群のなかでは周口店のエレクトスの年代が新しい(78万〜40万年前頃)ので、サンギランのエレクトスや「西方」エレクトスが周口店のエレクトスよりもハビリスの方に似ているのは、年代の違いによる原始的特徴の保持という可能性が考えられます。さらに、サンギランも含めて東南アジアのエレクトスと、周口店など北東アジアのエレクトスとでは、起源が異なるのかもしれません。ハビリスのような原始的特徴を有するエレクトス集団がユーラシア大陸南岸沿いに160万年前頃までに東南アジアまで進出した一方で、もっと後に、より派生的な特徴を有する集団がユーラシア大陸の北寄りを東方へと進み、北東アジアにまで到達したのかもしれません。

 更新世の東南アジア(スンダランド)と北東アジアとでは環境が異なっており、生態学的障壁が存在した可能性も考えられます。より原始的な特徴を有していたエレクトス集団が160万年前頃までに東南アジアまで進出したと考えると、東南アジアのエレクトス起源とも主張されている、フローレス島の更新世後期〜末期の人類であるフロレシエンシス(Homo floresiensis)の原始的特徴を説明できるかもしれません。更新世前期〜中期の化石・遺伝学的証拠が蓄積されていけば、エレクトスは、東南アジアと北東アジアだけではなく、もっと多くの地域集団に区分できるかもしれません。デニソワ人(種区分未定)の存在からも、更新世前期〜中期のユーラシア大陸には、複雑な人類集団の移動があったようです。

 本論文は、以上のような見解を提示しています。ジャワ島のエレクトスと周口店のエレクトスの頭蓋の比較図(Lewin.,2002,P148)を以前見た時の第一印象は、同じくエレクトスに分類されているとはいってもかなり形態が異なるな、というものだったので、本論文の見解にさほど違和感はありません。人類に限らず種区分の問題は難しいので、容易に議論は収束しないでしょうが、今後世界各地で少しでも多くの更新世前期〜中期の化石が発見され、種区分の問題も含めて人類の進化の様相が少しでも多く解明されることを期待しています。


参考文献:
Lewin R.著(2002)、保志宏訳『ここまでわかった人類の起源と進化』(てらぺいあ、原書の刊行は1999年)

Zaim Y. et al.(2011): New 1.5 million-year-old Homo erectus maxilla from Sangiran (Central Java, Indonesia). Journal of Human Evolution, 61, 4, 363-376.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2011.04.009

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