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zoom RSS 頭蓋の分析による現生人類出アフリカ説の検証

<<   作成日時 : 2015/12/19 00:27   >>

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 頭蓋の分析から現生人類(Homo sapiens)による出アフリカを検証した研究(Reyes-Centeno et al., 2015)を読みました。現生人類の出アフリカに関しては、回数・年代・経路などをめぐって議論が続いています(関連記事)。本論文は、更新世のアフリカおよびレヴァントの現生人類化石と、完新世のアジアの現生人類の膨大な頭蓋データを用いて、現生人類の出アフリカについて検証しています。

 本論文でも指摘されているように、これまでの諸研究から、遺伝・言語・頭蓋形態に関して、アフリカからの距離に比例して現生人類集団の多様性が減少していることが明らかになっています。ここから現生人類の出アフリカの具体的様相をどう解釈するのか、ということが議論になっています。本論文は、現生人類の出アフリカに関する仮説を4通りに分類しています。

(1)連続した創始者効果を伴う東方への拡散説。現生人類の出アフリカは1回のみで、アフリカから東方へと拡散するにつれて、創始者効果の連続により多様性が減少していった、と想定されています。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など他系統の人類との交雑の影響は限定的だった、と想定されています。

(2)複数拡散説。現生人類はアフリカから複数回拡散していき、10万〜5万年前頃の最初の拡散ではアラビア半島経由でユーラシア南岸を急速に拡散していき、5万〜4万年前頃に現生人類がまだ進出していなかったユーラシアの残りの地域に拡散した、と想定されます。オーストラリア・メラネシア・ニューギニア・アンダマン諸島・フィリピン諸島の一部集団などが、最初の出アフリカ現生人類集団の子孫であり、比較的孤立して進化してきた、と想定されます。

(3)複数拡散説の修正版です。オーストラリア先住民のみが最初の南岸経由での出アフリカ現生人類集団の孤立した子孫で、メラネシア人やフィリピン諸島の小柄な集団は、その後のアフリカからの第二波の移住者との交雑により、最初の出アフリカ現生人類集団の遺伝的痕跡が曖昧になっている、とされます。オーストラリア先住民とメラネシア人が比較的孤立した集団だというのは、ミトコンドリアやY染色体といった単系統の遺伝やゲノム規模の研究成果とも一致します。ただ、オーストラリア北部の先住民集団は歴史時代に他集団と低頻度の交雑を経験した、ともされています。現生人類の最初の出アフリカは75000〜62000年前頃、第二の出アフリカは38000〜25000年前頃と想定されています。ただ、アフリカ人とユーラシア人との分岐年代は遺伝的に14万年前頃までさかのぼり、最初の出アフリカはもっとさかのぼるのではないか、との指摘もあります。

(4)単一の拡散による南アジア分岐説。現生人類の出アフリカは1回のみで、南アジアまで進出した現生人類は、その後にオーストラリア大陸(更新世の寒冷期には、ニューギニア島やタスマニア島とも陸続きとなり、サフルランドを形成していました)まで東進した集団と、西アジア、さらにはアフリカまで西方へと「戻った」集団とに分岐します。

 本論文は頭蓋データの分析の結果、現生人類による複数回の出アフリカと、最初の出アフリカ現生人類集団の子孫たるオーストラロ・メラネシアン集団の比較的維持された孤立との見解を提示しています。このオーストラロ・メラネシアンの祖先集団は、レヴァントのスフール(Skhul)やカフゼー(Qafzeh)といった初期現生人類集団と関連しているのではないか、というのが本論文の見解です。現生人類の出アフリカの年代については、最初が135000〜80000年前の間のいずれかの時点以降、後の出アフリカが37000年前以前と推定されています。

 本論文の見解は、上記の区分で言えば(3)に近いものの、出アフリカの推定年代は(3)よりも古くなっています。本論文は、この見解はゲノム規模の分析や、140000〜115000年前頃と80000〜65000年前頃に現生人類が南岸経路でアフリカから拡散した、とする古気候の研究と一致するものの、単系統での遺伝となるミトコンドリアやY染色体の研究では、現生人類の1回のみの出アフリカが支持されている、と指摘しています。また、非アフリカ系現代人におけるネアンデルタール人由来と推定されるゲノム領域の割合が、多少の違いがあるとはいえ、各地域集団間でさほど変わらないことも、現生人類の出アフリカ1回説の根拠とされている、と本論文は指摘しています。

 現時点では、現生人類の出アフリカに関して、すべての研究成果と整合的な仮説を提示することは難しいようです。ただ、遺伝学の研究についてはやはり、単系統での遺伝となるミトコンドリアやY染色体よりは、ゲノム規模の分析の方が妥当である可能性は高いでしょう。また、非アフリカ系現代人におけるネアンデルタール人由来のゲノム領域の割合がオーストラロ・メラネシアン集団と他集団とで大差がないことに関しては、ネアンデルタール人と近縁関係にあるデニソワ人とオーストラロ・メラネシアン集団との交雑頻度が、他地域の集団より高いことを反映しているのではないか、との見解を本論文は提示しています。本論文の見解は魅力的ですが、現生人類の出アフリカに関してはまだ不明なところが多く、今後も長く議論が続くことになりそうです。


参考文献:
Reyes-Centeno H. et al.(2015): Testing modern human out-of-Africa dispersal models and implications for modern human origins. Journal of Human Evolution, 87, 95–106.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2015.06.008

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