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zoom RSS ネアンデルタール人とデニソワ人に由来する免疫に関連する遺伝子

<<   作成日時 : 2016/01/09 00:00   >>

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 これは1月9日分の記事として掲載しておきます。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)やデニソワ人からもたらされた免疫に関連する遺伝子についての二つの研究が報道されました。一方の研究(Dannemann et al., 2016)は、先天性免疫に関わるToll様受容体のうちの三つ(TLR6・TLR1・TLR10)を分析対象としています。先天性免疫に関わるToll様受容体は、バクテリア・菌類・寄生虫に対する防御の役割を果たしていることになり、人間の生存に重要です。

 この研究は、現代人と古代人のゲノム解析の結果を利用して、4番染色体上にあるToll様受容体のうちの三つ(TLR6・TLR1・TLR10)に関わる遺伝子について、現代人のハプロタイプに現生人類(Homo sapiens)ではない系統の人類であるネアンデルタール人やデニソワ人由来のものがあることを明らかにしています。ハプロタイプ3・4がネアンデルタール人由来、ハプロタイプ7がデニソワ人由来と推測されています。

 現代人の各地域集団間で、これら非現生人類系統由来のハプロタイプの割合は大きく異なっています。アフリカ(ここではサハラ砂漠以南を指します)の各地域集団では非現生人類系統由来のハプロタイプの割合が低いかまったくなく、一方でアジアやヨーロッパではその割合が高くなっています。これは、現生人類が出アフリカ後にネアンデルタール人と交雑し、世界各地に拡散した、とする現在の通説と整合的です。もちろん、イスラーム勢力の拡大や帝国主義時代の経緯などからも推測できるように、アフリカには(出アフリカを果たした現生人類の子孫たる)ユーラシア系の人類が侵出(帰還と言うべきでしょうか)しているので、現代のアフリカ人にネアンデルタール人由来のゲノム領域がわずかながら見られても不思議ではないでしょう。

 この研究が注目しているのは、そうしたハプロタイプの頻度の違いが、アフリカとユーラシア、もしくはアフリカとアジアとヨーロッパという大きな地域区分間だけではなく、ヨーロッパ内部やアジア内部においても見られることです。この研究は、Toll様受容体に関わる遺伝子の複数のハプロタイプに関して地域的な正の選択があったのではないか、と指摘しています。ネアンデルタール人はユーラシアで20万年以上存続した系統であり、地域的な気候・食物・病原菌によく適応していただろうから、交雑によりネアンデルタール人からToll様受容体に関わる遺伝子を受け継いだ現生人類にとって、地域によっては利益をもたらしたのではないか、というわけです。

 この研究の図を見ていると、高緯度地帯ではネアンデルタール人由来のハプロタイプの割合が低いように見えるのですが、例外的な地域集団もあるので、単純にネアンデルタール人由来のハプロタイプの割合と緯度とが対応しているわけではなさそうです。また、ボトルネック効果などによる偶発的な事情も考慮しなければならないでしょうから、高頻度でネアンデルタール人由来のハプロタイプが見られる地域集団だからといって、必ずしも強い正の選択を受けてきたとは言えないかもしれません。

 この研究は、人間の先天性免疫の進化において、異なる系統間の交雑による遺伝子移入が重要だった、という可能性を強調しています。確かに、現生人類のように広範な地域に拡散した人類系統にとって、新たな拡散先の地域に存在した先住人類の免疫に関わる遺伝子がその地域での生存に役立った、ということは珍しくなかったように思われます。またこの研究は、ネアンデルタール人からもたらされた免疫関連の遺伝子がアレルギーの発症につながったことも指摘しています。

 もう一方の研究(Deschamps et al., 2016)は、ネアンデルタール人のような古代人のゲノム解析と現代人のゲノム解析の結果を用いて、先天性免疫に関する選択圧の問題を検証しています。先天性免疫は生命の存続と深く関わっているため、強い選択圧が作用し続けてきた、とこの研究では指摘されています。個体の生存に致命的となるような変異が除去されるような強い選択圧があった、というわけです。

 この研究は、先天性免疫に関わる遺伝子について、他のタンパク質をコードする遺伝子よりもネアンデルタール人由来の割合が高いことを明らかにしています。さらにこの研究は、上述の研究(Dannemann et al., 2016)でもネアンデルタール人由来のハプロタイプが見られると指摘された、Toll様受容体のうちの三つ(TLR6・TLR1・TLR10)に関わる遺伝子で、ネアンデルタール人から由来している割合がとくに高いことも明らかにしています。

 この研究は、Toll様受容体のうちの三つ(TLR6・TLR1・TLR10)に関して、ヨーロッパ人において機能的適応変異を含んでいることも明らかにしています。それがヨーロッパにおいて現生人類の生存に何らかの利点をもたらした、ということなのでしょう。ここで取り上げた二つの研究から、現代人がネアンデルタール人など異なる系統の人類との交雑により地域的な適応を果たしていったことが、改めて示されたと言えるでしょう。もっとも、上述の研究(Dannemann et al., 2016)でも指摘されているように、アレルギーの発症などもありますから、利点ばかりでもなかったわけですが。


参考文献:
Dannemann M, Andrés AM, and Kelso J.(2016): Introgression of Neandertal- and Denisovan-like Haplotypes Contributes to Adaptive Variation in Human Toll-like Receptors. The American Journal of Human Genetics, 98, 1, 22-33.
http://dx.doi.org/10.1016/j.ajhg.2015.11.015

Deschamps M. et al.(2016): Genomic Signatures of Selective Pressures and Introgression from Archaic Hominins at Human Innate Immunity Genes. The American Journal of Human Genetics, 98, 1, 5-21.
http://dx.doi.org/10.1016/j.ajhg.2015.11.014

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