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zoom RSS Jared Diamond『若い読者のための第三のチンパンジー 人間という動物の進化と未来』

<<   作成日時 : 2016/02/06 00:30   >>

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 ジャレド=ダイアモンド(Jared Diamond)著、レベッカ=ステフォフ(Rebecca Stefoff)編著、秋山勝訳、長谷川眞理子解説で、草思社より2015年12月に刊行されました。原書の刊行は2014年です。本書は1993年に新曜社より日本語版が刊行された『人間はどこまでチンパンジーか? 人類進化の栄光と翳り』の圧縮版であり、その後の研究成果が参照された増補改訂版でもあります。

 表題にはチンパンジーとありますが、予想していたよりもチンパンジーの話題は少なく、人間を大きく生物の進化のなかに位置づける、という志向が強く現れているように思われます。生物の大量絶滅や環境破壊といった問題が近代に特有なのではなく、前近代においても存在したことを指摘し、それを人間の進化という文脈で解釈していることが本書の特徴の一つと言えるでしょう。現代社会のさまざまな危機的問題にたいする著者の深刻な懸念が根底にあるのだと思います。

 人類の進化についての解説は、親本の刊行が20年以上前ということもあってか、その後の研究成果が参照された増補改訂版とはいっても、古い見解に囚われているのではないのか、と疑問に思うところが少なからずありました。たとえば、上部旧石器時代のヨーロッパにおいて「大躍進」があった、との見解を強調していることです。本書は、この大躍進の前提として現生人類(Homo sapiens)の神経系の変化があった、とする見解を採用し、その確かな証拠は6万年前頃のヨーロッパに現生人類が到達した段階おいて確認される、と主張しています。

 しかし、ヨーロッパにおいて大きな文化的変化が上部旧石器時代に見られることは確かだとしても、そこにはある程度長い移行期が存在したのであり、現生人類が「大躍進」の要素を一括して有してヨーロッパに進出し、直ちに「開花」させたのかというと、疑問の残るところです。また、ヨーロッパに現生人類が進出した年代として6万年前頃はあまりにも古く、20〜30年前も現在も有力な見解とはとても言えないでしょう。本書のこの認識には大いに疑問が残ります。

 中期石器時代(本書では中期旧石器時代とされています)のアフリカの解剖学的現代人の石器はネアンデルタール人の石器とまったく同じだ、との評価も大いに疑問ですし、上部旧石器時代のヨーロッパにおける現生人類の長距離交易の指摘にしても、それよりもずっと前の中期石器時代のアフリカの事例に言及しないのには疑問が残るところです。全体的に、本書にはヨーロッパ中心主義的傾向が認められるように思います。

 それとも関連しているのか分かりませんが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)も過小評価されているように思います。ネアンデルタール人には「革新性」の能力がなく、芸術を創造しなかった、との評価は、現生人類との相対的な比較だとしても、疑問が残るところです。アメリカ大陸への人類の進出に関してクローヴィス最古説が採用されていることや、人類がユーラシアに拡散したのは100万年前頃とされていることなど、本書には古い見解を引きずっているところが散見されます。それが本書の価値を大きく下げているとまでは言えないかもしれませんが、2015年末の時点での人類進化の概説としては、やや問題があるのではないか、と思います。


参考文献:
Diamond J, and Stefoff R.著(2015)、秋山勝訳『若い読者のための第三のチンパンジー 人間という動物の進化と未来』(草思社、原書の刊行は2014年)

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