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zoom RSS 7000年前頃までのヨーロッパの現生人類の遺伝史(追記有)

<<   作成日時 : 2016/05/04 00:00   >>

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 これは5月4日分の記事として掲載しておきます。47000〜7000年前頃の51人のユーラシアの現生人類(Homo sapiens)のゲノムを解析した研究(Fu et al., 2016)が報道されました。BBCでも報道されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。この分析の結果明らかになったのは、ヨーロッパの最初期の現生人類は、現代ヨーロッパ人の遺伝子プールにはほとんど影響を及ぼしていないようだ、ということです。

 現生人類は45000年前頃にヨーロッパに初めて到達し、ヨーロッパの先住人類たるネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)は、4万年前頃までには絶滅した、と推測されています(関連記事)。この研究は、現生人類のゲノムに占めるネアンデルタール人由来と推測される領域の割合が、ユーラシアの最初期の現生人類では3〜6%だったのに、現代人では約2%へと減少しているのは、ネアンデルタール人由来のDNAのなかには現生人類にとって有害なものもあり、排除された結果ではないか、との見解を提示しています。

 37000〜14000年前頃のヨーロッパの現生人類は単一の創始者集団の子孫だった、との見解をこの研究は提示しています。初期現生人類が担い手とされるヨーロッパの文化としては、オーリナシアン(Aurignacian)やグラヴェティアン(Gravettian)があります。この研究は、オーリナシアンの担い手とグラヴェティアンの担い手は系統的に区分され得るものの、単一の創始者集団の子孫だった、と指摘しています。オーリナシアンの担い手の系統は、34000〜26000年前の間に、グラヴェティアンの担い手に取って代わられた、とこの研究は推測しています。このオーリナシアンの担い手の系統は、一度はヨーロッパの大半で確認されなくなりますが、それと関連した系統が、19000年前以降に、ヨーロッパ南西から拡大します。これは、最終氷期最盛期の終焉により温暖化して氷床が後退していったことにより、より温暖な南西ヨーロッパから北方への拡大が可能になったからではないか、と推測されています。文化的には、この系統はマグダレニアン(Magdalenian)の担い手です。

 37000〜14000年前頃のヨーロッパの現生人類は単一の創始者集団の子孫だった、と推測するこの研究は、次の画期は14000年前頃に現代の中東の人々と遺伝的により密接に関連した集団がヨーロッパに広範に進出することである、と指摘しています。これは、東方からの現生人類の移住を反映しているのではないか、と考えられています。ヨーロッパにおける農耕の始まりまで、この系統は存続します。その後ヨーロッパでは、7000年前の農耕の始まりと、5000年前以降の青銅器時代において、再び大規模な遺伝的構成の変化があった、と推測されています。

 更新世のヨーロッパにおいて、現生人類は肌の色が濃く、目が茶色でした。ヨーロッパでは、14000年前以降に青い目が広がり始め、7000年前以降に薄い肌の色が広く見られるようになります。イタリアのヴィラブルナ(Villabruna)で発見された、この14000〜7000年前の期間の男性は、濃い色の肌と青い目を有していました。この研究は、完新世だけではなく更新世においても、ヨーロッパでは大規模で複雑な現生人類の移動があったのではないか、と指摘しています。

 たいへん興味深い研究なのですが、ヨーロッパの初期現生人類でDNAの解析に成功した事例がまだたいへん少ないことも否定できません。ヨーロッパの初期現生人類と、現代ヨーロッパ人との関係については、まだ確定的なことが言えない状況であると思います。近年では、現生人類とネアンデルタール人との複雑な交雑史が指摘されるようになるなど、人類の複雑な移動・交流が強調されるようになっています。ヨーロッパにおける初期現生人類の遺伝史もおそらく同様なのでしょう。


参考文献:
Fu Q. et al.(2016): The genetic history of Ice Age Europe. Nature, 534, 7606, 200–205.
http://dx.doi.org/10.1038/nature17993


追記(2016年6月10日)
 本論文が『ネイチャー』本誌に掲載されたので、以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。



集団遺伝学:氷期のヨーロッパの遺伝学的歴史

集団遺伝学:後期旧石器時代のユーラシア人

 今回D ReichとS Pääboたちは、約4万5000〜7000年前のユーラシア人51個体の古代ゲノムデータを解析した。データから、新石器時代前のヨーロッパの集団の歴史について、これまでで最も包括的な知見が得られ、この期間のヨーロッパ人集団において、移動や集団の入れ替わりが繰り返し起こっていたことが裏付けられた。ネアンデルタール人系統の寄与は、約4万5000年前の3〜6%から現在のおよそ2%へと低下していた。

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