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zoom RSS リアンブア洞窟の後期更新世の現生人類の歯

<<   作成日時 : 2016/09/25 00:00   >>

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 これは9月25日分の記事として掲載しておきます。インドネシア領フローレス島のリアンブア(Liang Bua)洞窟遺跡で46000年前頃の現生人類(Homo sapiens)の歯が発見された、と報道されました。この研究(Sutikna et al., 2016)は、今月(2016年9月)14日〜18日にかけてマドリードで開催された人間進化研究ヨーロッパ協会の第6回総会で報告されており、まだ論文としては刊行されていません。この研究の要約は、PDFファイルで読めます(P232)。

 リアンブア洞窟では、人骨・石器といった後期更新世の人類の痕跡が確認されています。この人骨群は、病変の現生人類(Homo sapiens)とも主張されていますが、現在では、ホモ属の新種フロレシエンシス(Homo floresiensis)と分類する見解がほぼ確立したと思います。フロレシエンシスがどの人類系統から分岐したのか、まだ確定したとは言い難い状況で、同じくホモ属のエレクトス(Homo erectus)から進化したという見解と、より祖先的なホモ属であるハビリス(Homo habilis)のような人類系統か、さらに祖先的な後期アウストラロピテクス属から進化した、という見解とに大別されます。

 じゅうらい、フロレシエンシスの下限年代は17000年前頃もしくは13000〜11000年前頃と推定されていましたが、リアンブア洞窟遺跡の堆積層の再検証により、人骨の下限年代は6万年前頃、フロレシエンシスの所産と考えられる石器群の下限年代は5万年前頃と見直されました(関連記事)。これにより、フロレシエンシスの痕跡が見られなくなる年代と、フローレス島の近隣地域であるサフルランドへの現生人類の進出時期とが近くなり、ユーラシアにおいてネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の絶滅に現生人類が重要な役割を果たしたであろうように、フロレシエンシスの絶滅にも現生人類が関わっている可能性が提示されました。

 しかし、リアンブア洞窟の更新世の層からは現生人類の痕跡が発見されていない、と言われており、それも後期更新世の人骨群を新種フロレシエンシスと分類する根拠の一つとされていたわけですが、一方で、現生人類が近隣地域であるサフルランドに進出した後数万年間、なぜフローレス島には進出しなかったのか、という問題が生じました。しかし今年になって、リアンブア洞窟では41000〜24000年前頃の現生人類の痕跡が確認される、との見解が提示されました(関連記事)。しかし、人為的な燃焼の痕跡が根拠とされており、人類化石という直接的な証拠は提示されていませんでした。

 この研究は、リアンブア洞窟における石器・動物相の変化と、新たに発見した臼歯2個から、現生人類はフローレス島に遅くとも46000年前頃までに進出していた、という見解を提示しています。石器に関しては、46000年前頃までに主要な石材が、広範な地域で現生人類に好まれていたチャートへと変わっていたことが指摘されています。ただ、東南アジア島嶼部では更新世の現生人類が存在しなかった頃から完新世まで石器技術が継続しており、それはリアンブア洞窟でも同様だった、とも指摘されています(関連記事)。

 動物相に関しては、現時点でフロレシエンシスの下限年代となる5万年前頃までに、小型象であるステゴドン(Stegodon florensis insularis)や巨大なコウノトリであるアフリカハゲコウ(Leptoptilos robustus)やハゲワシ(Trigonoceps sp.)が絶滅したことが指摘されています。アメリカ大陸やオーストラリア大陸(更新世の寒冷期にはタスマニア島・ニューギニア島と陸続きでサフルランドを形成していました)では、現生人類の進出と大型動物の大量絶滅との関連が指摘されており、フローレス島でも同様だったのかもしれません。一方、リアンブア洞窟の46000年前頃以降の堆積層からは、貝殻が発見されています。現生人類は初期から貝など海産資源をよく食べていました(ネアンデルタール人も海産資源を食べていましたが)。

 石材や動物相の変化は間接的な証拠と言えますが、歯は直接的な証拠となります。2010年と2011年に上下の顎の臼歯が2点発見され、その近くの炭から、年代は46000年前頃と測定されました。ただ、下顎臼歯の方は現生人類的であるものの、上顎臼歯はやや祖先的特徴があるように見える、とも指摘されています。これらの間接的・直接的証拠から、現生人類が遅くとも46000年前頃にはフローレス島に到達していた可能性は高い、とこの研究は指摘しています。

 この研究に関わっていないストリンガー(Chris Stringer)博士は、フロレシエンシスと現生人類との短期間の共存があったのかまだ確定していない、と慎重な姿勢を示しつつ、もし両者が共存していたならば交雑もありえた、と指摘します。来年4月、研究チームはリアンブア洞窟に戻り、50000〜46000年前の堆積層を発掘する予定とのことで、今年になって一気に飛躍した感のあるフロレシエンシスの研究(関連記事)が、新たな発見でさらに進展するのではないか、と大いに期待されます。


参考文献:
Sutikna T. et al.(2016B): Modern humans on Flores by 46 thousand years ago: New evidence from Liang Bua. The 6th Annual ESHE Meeting.

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