雑記帳

アクセスカウンタ

zoom RSS 縄文時代の人類の核DNA解析

<<   作成日時 : 2016/09/03 00:17   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 5 / コメント 0

 縄文時代の人類の核DNA解析結果を報告した研究(Kanzawa-Kiriyama et al., 2017)が報道されました。NHKでも報道されています。解説も公表されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究は、福島県相馬郡新地町の三貫地貝塚の縄文時代(3000年前頃)の人類2人(男性と女性)の歯から核DNAのうち1億1500万塩基対を解析し、現代人や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)も含む他の古代人と比較しています。これは、縄文時代の人類の核DNAの解析としては初の報告となります。なお、三貫地縄文人のミトコンドリアDNAのハプログループは、他の縄文人に関しても報告されていたN9bに分類されます。

 三貫地縄文人と現代人・他の古代人とのゲノムの比較の結果、三貫地縄文人は現代東ユーラシア集団の多様化の前に分岐し、他の大陸集団との間に遺伝子流動はなかった、と推測されました。現代人の各地域集団で三貫地縄文人と遺伝的に最も近縁なのはアイヌ人で、次に沖縄の琉球人、その次に東京周辺の集団でした。アイヌ人と沖縄の人々を除く現代の「本土日本人」に継承された縄文人ゲノムの割合は15%程度と推定されています。この研究は、現代日本人が縄文人と弥生時代以降の渡来系との交雑の結果として形成されたことが改めて確認された、と指摘しています。また、ネアンデルタール人やデニソワ人との比較では、三貫地縄文人は他の非アフリカ系現代人と比較して、遺伝的類似性に大きな差はないそうです。

 現時点では、縄文人の祖先集団は他の東ユーラシア集団と早期に分岐した後に日本列島に渡来し、遺伝的には比較的孤立して縄文時代の日本列島に居住し続けた後、弥生時代以降に渡来系と交雑し、現代の「本土日本人」が形成された、と考えられます。縄文時代の日本列島の人口は少ないと推定されており、弥生時代以降の渡来系も人数自体はさほど多くなかったのでしょうが、経済(本格的な水稲耕作)や文化(本格的な戦争文化)での優越により、縄文時代以来の在来系よりも人口増加率が高かった、ということなのかもしれません。ただ、縄文人とはいっても、年代は長期にわたり、地域は広範ですから、その遺伝的特徴は年代・地域によりかなり多様だったかもしれません。その意味で、縄文時代やその前後の時代の古代人のゲノム解析数が蓄積され、研究が進展することを期待しています。


参考文献:
Kanzawa-Kiriyama H. et al.(2017): A partial nuclear genome of the Jomons who lived 3000 years ago in Fukushima, Japan. Journal of Human Genetics, 62, 2, 213–221.
http://dx.doi.org/10.1038/jhg.2016.110

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
7700年前頃の東アジア人のDNA
 これは2月3日分の記事として掲載しておきます。7700年前頃の東アジア人のDNAに関する研究(Siska et al., 2017)が報道されました。これまで、西ユーラシアでは多くの旧石器時代・中石器時代・新石器時代・金属器時代以降の人類のDNAが解析されており、農耕の開始にともなう人類集団の遺伝的構成の変遷がしだいに明らかになりつつあります。そこで明らかになってきたのは、ヨーロッパでは旧石器時代から現代にいたるまで、西アジアやユーラシア内陸部から農耕や冶金技術を携えた集団の大規模な移動... ...続きを見る
雑記帳
2017/02/02 19:05
斎藤成也『核DNA解析でたどる日本人の源流』
 これは12月3日分の記事として掲載しておきます。河出書房新社から2017年11月に刊行されました。本書はまず人類進化史と現生人類(Homo sapiens)のアフリカからの拡散を、最新の研究成果に基づいて簡潔に概観した後、日本列島の現代人がどのように形成されてきたのか、おもに核DNAの解析結果に基づいて検証しています。もっとも、本書は、核DNAよりは得られる情報が少なくなるものの、ミトコンドリアDNA(mtDNA)とY染色体DNAについてのこれまでの研究も取り上げています。本書で言及され... ...続きを見る
雑記帳
2017/12/01 09:49
バヌアツの人類集団の形成史
 これは3月6日分の記事として掲載しておきます。バヌアツの人類集団の形成に関する二つの研究が公表され、報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。これらの研究はオンライン版での先行公開となります。これら二つの研究は、バヌアツやその周辺地域の人類の古代および現代のDNAを解析し、ゲノム規模のデータを得て、バヌアツの人類集団の変遷を検証しています。両方の新研究の間で共通認識もあるものの、相違も見られます。 ...続きを見る
雑記帳
2018/03/04 19:54
縄文時代と現代日本
 これは3月7日分の記事として掲載しておきます。一つ前の記事で取り上げた、バヌアツにおける人類集団の形成史に関する研究は、日本列島における人類集団の遺伝的構成の変遷と言語の形成過程に関する議論にも参考になりそうだという点でも、大いに注目されます(関連記事)。日本列島の人類史における縄文時代の位置づけについては、まだ不明なところが多分にある、と言わざるを得ないでしょう。現代日本社会の「愛国的な見解」においては、縄文時代から現代まで継続する一貫した「日本」が措定され、現代日本社会の「確たる基盤... ...続きを見る
雑記帳
2018/03/06 17:58
DHC会長独占手記「アジアの中でも唯一日本人だけがヨーロッパ人に近い民族だった」
 &#134071;田嘉明DHC会長の手記が「iRONNA」に掲載されました。『ニュース女子』という情報バラエティー番組の沖縄についての報道にたいする放送倫理・番組向上機構(BPO)の審議結果、およびマスコミ・法曹界・官界など現在の日本社会への不満が述べ立てられています。今回は、&#134071;田会長の手記のなかでも、当ブログで頻繁に取り上げている人類進化史についての記述を取り上げます。該当箇所を以下に引用します。 ...続きを見る
雑記帳
2018/05/01 18:57

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
縄文時代の人類の核DNA解析 雑記帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる