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zoom RSS 冨田健之『世界史リブレット人012 武帝 始皇帝をこえた皇帝』

<<   作成日時 : 2016/09/08 00:00   >>

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 山川出版社より2016年2月に刊行されました。漢の武帝は恵まれた状況で即位した、と言われています。呉楚七国の乱で中央集権化が進み、大規模な「対外戦争」が長期にわたってなかったこともあり、国家財政では巨額の蓄えがあった、というわけです。しかし本書は、呉楚七国の乱により直轄領が激増したことで中央政府から派遣されるべき官吏が不足したことなど、武帝即位時にはその前の国政改革により政治状況は楽観的なものではなかった、と指摘しています。武帝は困難な政治状況下まだ十代で即位し、試行錯誤しつつ皇帝としての権威を確立していったのではないか、というのが本書の見通しです。

 本書のこうした見解の前提として、中央集権制を歴史の必然として、漢代前期の郡国制は妥協の産物だった、との歴史認識への見直しがあります。秦の失敗を踏まえて、広大な領地を安定して統治する方法として、郡国制は積極的に採用されたのではないか、というわけです。本書はこのような認識に基づき、始皇帝との比較で武帝の治世を評価しています。有能で勤勉な皇帝による激務を前提とする始皇帝的な政治支配から、安定した組織的な政治支配への移行が武帝の代に進み、古代帝国の枠組みが定まって漢王朝の統治は安定した、というのが本書の見通しです。

 中央政府の役割が激増するなか、宰相たる丞相には肥大化した官僚群の統制が求められ、一方で皇帝による支配の貫徹のために、皇帝の近臣群が形成されていき、やがて組織化されていきます。武帝期はそのような試行錯誤の時代であり、丞相の処刑が目立つのも、そうした時代背景で解釈されています。本書は皇帝支配という観点からの武帝の評伝で、経済政策や有名な対外政策についての記述は少ないのですが、古代史における武帝の位置づけを明確にした好著だと思います。

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