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zoom RSS 岡本隆司『中国の論理 歴史から解き明かす』

<<   作成日時 : 2016/12/09 00:00   >>

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 これは12月9日分の記事として掲載しておきます。中公新書の一冊として、中央公論新社から2016年8月に刊行されました。本書は、現代中国社会の論理がいかに形成されたのか、歴史的経緯から解説しています。前近代の論理の特徴・形成過程の解説に重点を置いているのが本書の特徴で、そうした前近代の知的状況を前提として、西洋の衝撃を受けた近代以降にどのように中国の論理が変容していったのか、また前近代の論理が現代にどのように残っているのか、ということが論じられています。

 本書は、史学(時間・歴史観念)・社会と政治の構造・世界観と世界秩序という三つの観点から、中国の論理の特徴と形成・変容過程を検証しています。本書の提示する伝統的な中国の論理と特徴は、「士」と「庶」あるいは「官」と「民」の隔絶した二重構造社会のもと、儒教イデオロギーに基づく華夷秩序の世界観が形成され、儒教イデオロギーの正統性を保証するというか、儒教イデオロギーに奉仕するために史学がある、というものです。経書に基づく儒教イデオロギーは、経書をはじめとして古典に強く依拠する価値観を定着させました。

 こうした伝統的な中国の論理・特徴のうち、世界観と世界秩序は近代になって大きく変容します。西洋列強の優勢な経済・軍事力のもと、華夷秩序的な世界観から建前上は諸国が対等に併存する西洋的な国際関係へと変わっていき、優勢な西洋列強を見習う動きも出てきます。もっとも、華夷秩序的な世界観は根強く、西洋列強の優勢な学術・技術・経済・軍事なども、中国の古典の読み替えで受容されていきました。古典に強く依拠する価値観は容易に変わらなかったわけです。

 しかし、日清戦争での敗北は中国の知識層にとって大きな衝撃となり、もはや古典の読み替えで西洋の「先進性」を受容するやり方では西洋の精髄を手中にできないので、古典に強く依拠する文章の在り方から変えていこう、という運動が起きます。こうして、梁啓超が重要な役割を果たした新たな文体(新民体)の成立は1920年代以降の新文化運動へとつながり、それが国民党や共産党の勢力拡大へとつながっていきます。こうした動きに大きな影響を与えたのが、同じく漢字文化圏の日本の近代化でした。

 このように中国の論理・特徴は、近代になって大きく変容していきましたが、二重構造社会や特定のイデオロギー(かつては儒教)に奉仕する史学は共産党政権下でも変わらず(毛沢東は二重構造社会を解消しようとしましたが、大惨事となって失敗しました)、現代の中国社会でも根強く残っていることが指摘されています。また、華夷秩序的な世界観も、中国が列強を追い払い、さらには高度経済成長期を迎えて世界第二位の規模の経済大国になるにつれ、顕在化してきました。こうした中国の論理が民族問題や周辺諸国との軋轢をもたらしている、と本書は指摘しています。

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檀上寛『天下と天朝の中国史』
 これは12月15日分の記事として掲載しておきます。岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2016年8月に刊行されました。天下と天朝という観点からの中国通史となっています。天下には中国王朝の実効的支配領域(中華)を指す狭義の天下と、「中華」と「夷狄」の両方を指す広義の天下がある、というのが本書の基本認識です。また、東アジア世界においては、中華世界の(知識層の)天下観念(大天下)をもとに、やがて日本も含めて周辺地域においても天下観念(小天下)が形成されていき、大天下と小天下が併存していた... ...続きを見る
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2016/12/14 19:57

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