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zoom RSS 長谷川眞理子、 山岸俊男『きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」』

<<   作成日時 : 2017/04/23 00:00   >>

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 これは4月23日分の記事として掲載しておきます。集英社インターナショナルより2016年12月に刊行されました。本書は著者二人の対談で、一般読者層にもたいへん読みやすくなっていると思います。あとがきにあるように、編集者の力量が優れている、ということなのでしょう。さすがに第一人者同士の対談だけあって、じゅうぶん読みごたえがありましたし、教えられるところが多々ありました。

 本書の基調は、人間を特定の環境に適応してきた進化の産物と把握していることです。人間の認知は長期にわたる狩猟採集生活への適応として進化してきたものであり、農耕開始以降の大規模な集団での生活に適応できるだけの進化的時間を経過していない、というわけです。心は「空白の石板」ではなく、たとえば人間の情動には生得的なものもある、という進化学的な知見を前提として、社会を設計していかねばならない、と本書は強調しています。少子化などの社会問題は「心がけ」で解決するものではなく、制度設計が重要ですが、人間の頭脳は進化の産物なので、どんな制度設計も可能というわけではありません。

 人間には他人の心理・意図を推論する能力が備わっているものの、それはあくまでも想像でしかない、ということも本書では強調されています。本書は、破滅へといたる社会の暴走、たとえばアメリカ合衆国との戦争へと突入した日本社会の心理状況についても、そのような観点から説明できるのであり、真珠湾攻撃に喝采した人々が多くいたことも、一方で真珠湾攻撃を知って日本の敗北まで考えた人もいたことも、矛盾するものではない、と指摘しています。歴史の解明にしても、進化学的な観点が必要なのだな、と改めて思った次第です。

 差別と偏見を分けて考えねばならない、との見解など、本書の見解に興味深いものは多く、その全てに直ちに同意するわけではありませんが、今後調べていきたい、と思わせる問題提起が多く、たいへん有益な一冊になっていると思います。本書はグローバル化する現代社会への対応として、「安心社会」から「信頼社会」への移行を提言していますが、正直なところ、著者二人とは大きく異なり「才能のある強い個人」ではない私は、自分にとってはたいへん難しいことだな、とも思ってしまいました。まあ、たいへん情けない話ではありますが。


参考文献:
長谷川眞理子、山岸俊男(2016)『きずなと思いやりが日本をダメにする 最新進化学が解き明かす「心と社会」』(集英社インターナショナル)

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