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zoom RSS 更新世の食人行為の評価(追記有)

<<   作成日時 : 2017/04/08 00:00   >>

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 これは4月8日分の記事として掲載しておきます。更新世の食人行為の評価に関する研究(Cole., 2017)が報道されました。食人行為は、その背徳性もあって、一般層の関心もなかなか高く、学界でも食人行為にはずっと一定以上の関心が寄せられているように思います。食人行為の目的に関しては、議論が続けられてきました。大まかには、儀式・(飢餓などによる)栄養摂取・攻撃性の発露(復讐)・薬用などに分類されます。

 この研究は、脂肪とタンパク質から計算される人体のカロリー価を、他の動物と比較し、更新世の食人行為はどのように評価されるのか、検証しています。この研究が分析対象としたのは更新世のホモ属です。人体のカロリー価に関しては、現代人から推定されています。そのため、現代人よりもがっしりとした体格だったネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)などの現生人類(Homo sapiens)ではないホモ属は、現代人よりも1人当たりのカロリー価が高かった可能性もある、と指摘されています。

 この研究は、更新世の遺跡で発見された(ホモ属ではない)動物化石のカロリー価を産出し、現代人のカロリー価が体のサイズおよび重量のほぼ近い動物種と同じであることを明らかにしています。成人男性1人につき、約60人の1日分の必要カロリーと推定されています。しかし、ホモ属がしばしば狩猟対象としたマンモスなどの大型動物と比較すると、ホモ属のカロリー価の方が有意に低かっただろう、とも指摘されています。さらに、ホモ属の認知能力より推定されるホモ属狩りの危険性からも、飢餓などによる「純粋な」栄養摂取のみが食人行為の目的とは考えにくい、との見解が提示されています。

 そこでこの研究は、社会的・文化的背景の食人行為も想定しています。現生人類のみならず、他のホモ属に関しても、同様の背景があったかもしれない、とこの研究は想定しています。それは、更新世の食人行為が各ホモ属系統(種)間で類似する傾向を示すことから推測されており、資源や領域をめぐって集団間・集団内の相互作用が要因となったかもしれない、と指摘されています。そうだとすると、更新世の現生人類ではないホモ属の社会構造と集団間および集団内の相互作用は、現在の推定よりはるかに複雑だったかもしれない、との見解が提示されています。

 この研究はその根拠として、ネアンデルタール人と現生人類との複雑な交雑史や、5万年前頃以降の現生人類と比較するとはるかに少ないとはいえ、ネアンデルタール人にも見られる象徴的行動を挙げています。埋葬を行なっていたネアンデルタール人の食人行為は、現生人類と同様に複雑だったかもしれない、というわけです。本論文のような観点からの食人行為の研究が進めば、更新世の現生人類ではないホモ属の見直しにもつながりそうで、今後の進展が注目されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【考古学】人食いによる摂取カロリーを計算する

 先史時代に行われていた食人は、純粋に「栄養をとる」という性質のものではなかった可能性を示唆するツールを紹介した論文が、今週掲載される。このツールとは、人体の各部位のカロリー価の代理指標が記載されたテンプレートのことであり、先史時代の食人が、他の動物の肉を摂取する場合と比較して、食事としてどれほどの価値を有していたのかを判断するために利用できると考えられている。

 今回、James Coleは、4人の男性の化学組成分析によって得た身体各部の平均重量とカロリー価(脂肪とタンパク質)を総合して人体の栄養テンプレートを構築した。しかし、こうして得られたデータは現代人に関するものであり、ヒト(Homo sapiens)以外のヒト族種においてどの程度異なるのかは明らかでない。Coleは、ネアンデルタール人の骨格筋の筋肉量が多いため、そのカロリー価もテンプレートの値より高かった可能性があり、ヒト以外のヒト族種のカロリー価は、今回の研究で明らかになった値と同等かそれ以上だったと考えるべきだろうという見解を示している。

 Coleは、旧石器時代に食人が行われていた遺跡において化石で発見された動物種について算出されたカロリー価を比較して、ヒトの骨格筋の栄養価が、体の大きさと重量が近い動物種とほぼ同じことを明らかにした。一方、ヒトが生み出すカロリーよりもヒト族が食用にしていたことが知られる大部分の大型動物(例えば、マンモス、ケサイ、シカ種)が生み出すカロリーの方が有意に高いことも明らかになった。

 Coleは、栄養をとるという目的だけでヒト族の狩猟を行って摂取することの実行可能性が、今回の研究で得られた知見によって疑問視されていると主張し、先史時代の食人を明らかにするための全体論的アプローチの一部として今回の研究によるデータと方法を採用することを推奨している。



参考文献:
Cole J. et al.(2017): Assessing the calorific significance of episodes of human cannibalism in the Palaeolithic. Scientific Reports, 7, 44707.
http://dx.doi.org/10.1038/srep44707


追記(2017年4月12日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。

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