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zoom RSS 松本晶子「ヒヒとヒト サバンナの隣人から見える社会性の起源」

<<   作成日時 : 2017/06/30 00:00   >>

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 『現代思想』2017年6月号の特集「変貌する人類史」に掲載された論文です。本論文は、ヒトの社会性の進化に関して、長期間サバンナ環境に適応してきたという共通性から、ヒヒを参照モデルとしています。ヒヒは、ある程度(20kg)以上の体重の霊長類という点でも、ヒトとの比較対象として相応しい、と言えそうです。

 体格から分かる社会構造として、雌雄の体格差が大きいと単雄複雌、雌雄の体格差が小さいとペア型、両者の中間では複雄複雌型と一般的には言われています。ヒヒとゲラダヒヒの共通祖先種の時点では複雄複雌型もしくはペア型だったのにたいして、ゲラダヒヒ属は化石種も現生種も単雄複雌型です。ヒヒ属の方は、現生4種のうち、1種(マントヒヒ)が単雄複雌型、3種が複雄複雌型で、マントヒヒとゲラダヒヒではそれぞれ独自に単雄複雌型が進化していった、と考えられます。マントヒヒは後期更新世にバブエルマンデブ海峡が陸続きになった時にアフリカからアラビア半島へと渡ったと考えられており、現生人類(Homo sapiens)が同時期に同じ経路をたどって出アフリカを果たした可能性も指摘されています。また、ヒヒの各種間、さらにはゲラダヒヒとヒヒの1種(アヌビスヒヒ)との間に繁殖能力のある雑種が生まれると確認されていることから、種区分の難しさを改めて思い知らされます。

 ヒヒの集団規模に関しては、食資源や捕食者への対抗が規定要因になっており、それは人類も同様だっただろうことが指摘されています。ただ、ヒヒと人類とでは捕食者を恐れる度合いが違っていただろうことから(前頭前皮質と海馬が小さいとより恐れを感じます)、それが捕食者にたいする人類の対抗をヒヒのそれとは違うものにしていただろう、と推測されています。また、集団規模の規定要因として、複数の雄が存在すると捕食者への対抗のさいに有利となるものの、血縁のない雄間の争いが強くなることも指摘されています。

 進化学における大きな問題である利他性については、生活史と関わっている可能性が指摘されています。ヒヒが離乳後はほとんど自力で必要カロリーを獲得するのにたいして、人類はかなり遅くまで(男性は17歳前後、女性は40代後半)、必要カロリーのエネルギー収支がマイナスになります。このように他者に依存するところの大きい人類社会において、高度な利他性が進化したのではないか、というわけです。利他性の進化については、定番の血縁淘汰と互恵的利他主義とともに、人類に特有の高度な利他主義に関しては、集団間の競争の観点から複数レベル淘汰が想定されています。また、複数レベル淘汰をもたらす条件である集団間の葛藤は、自集団にたいする寛容さと他集団にたいする敵対心を生じさせ、人類の協力性と暴力性は合わせ鏡のように共進化してきたのではないか、とも指摘されています。


参考文献:
松本晶子(2017)「ヒヒとヒト サバンナの隣人から見える社会性の起源」『現代思想』第45巻12号P175-189(青土社)

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