雑記帳

アクセスカウンタ

zoom RSS 新たに確認されたデニソワ人

<<   作成日時 : 2017/07/19 00:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

 これは7月19日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのが遅れましたが、南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)で1984年に発見された、右側下顎第二乳臼歯(Denisova 2)のDNA解析に関する研究(Slon et al., 2017B)が公表されました。デニソワ洞窟では、現生人類(Homo sapiens)ともネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)とも違うホモ属である、種区分未定のデニソワ人(Denisovan)が確認されています。デニソワ人は、解剖学的に定義された他の人類系統とは異なり、遺伝学的に定義された人類系統で、現時点ではデニソワ洞窟でのみ確認されています。これまでにデニソワ人に分類されているのは、手の末節骨1個(デニソワ3)・臼歯2個(デニソワ4・デニソワ8)です。デニソワ3に関しては、高網羅率のゲノム配列が得られており(関連記事)、デニソワ4・8に関しても、ゲノム解析結果が提示されています(関連記事)。なお、デニソワ洞窟では、ネアンデルタール人女性の足の指骨も発見されています(関連記事)。

 この研究はデニソワ2のDNAを解析し、デニソワ人・ネアンデルタール人・現代人と比較しています。デニソワ2は激しく摩耗していたので、形態学的比較は困難なのですが、ネアンデルタール人や現生人類よりも大きく、年齢は現代人では10〜12歳に相当する、と推測されています。デニソワ2のmtDNAの解析の結果、デニソワ2はデニソワ人・ネアンデルタール人・現代人・スペイン北部の通称「骨の穴(Sima de los Huesos)洞窟」遺跡で発見された中期更新世の人骨群(関連記事)との比較で、デニソワ人の系統に分類されました。デニソワ人の間では、デニソワ3・4とデニソワ2.8とでそれぞれ分類群を形成することが明らかになりました。塩基置換の比較から、デニソワ8はデニソワ3・4よりかなり古い年代になると推測されていましたが(関連記事)、この研究では、デニソワ2の方がデニソワ8よりも古い、と推測されています。具体的には、デニソワ2は、デニソワ3よりも54200〜99400年、デニソワ8よりも20600〜37700年古いと推定されています。デニソワ3とデニソワ4は、近い年代(3700〜6900年の違い)と推定されています。

 デニソワ2の核DNA解析の結果、常染色体とX染色体の配列網羅率の比は1.06となり、デニソワ2は女性だと推測されています。デニソワ2の核DNA断片の部分的な解析と、高網羅率のゲノム解析が行なわれている現代アフリカ人・ネアンデルタール人・デニソワ人との比較の結果、デニソワ2において共有される派生配列の比率は、ネアンデルタール人およびデニソワ人の共有とで84%、デニソワ人固有とで49%、ネアンデルタール人固有とで6%、現代人固有とで5%となり、核DNAの解析でも、デニソワ2は現生人類・ネアンデルタール人との比較でデニソワ人に分類されました。デニソワ2の核DNAの解析も踏まえると、単一の洞窟のみで発見されているデニソワ人の遺伝的多様性は、複数の遺跡で発見されているネアンデルタール人とほぼ同等で、世界規模の現代人よりも低くなります。

 現代人のDNAとの置換率の比較から、デニソワ3の年代は60000〜48000年前頃と推定されています。置換率の不確実さを考慮に入れても、デニソワ2は少なくとも10万年以上前のホモ属となります。この結果から、デニソワ人は長期にわたってアルタイ地域のデニソワ洞窟周辺で存続していた、と考えられます。上述したように、DNA解析されたデニソワ人の年代は長期にわたっているにも関わらず、その遺伝的多様性は現代人よりも低くなっています。これは、デニソワ3の高網羅率のDNA解析の結果から、デニソワ人の集団規模は小さかったと推測されていることと整合的です。ただ、デニソワ人はデニソワ洞窟のみで確認されているので、他地域でも発見されれば、その遺伝的多様性がこれまでの推定より高くなる可能性もある、と指摘されています。

 この研究により、デニソワ洞窟で新たなデニソワ人が確認されたわけですが、やはり期待されるのは、他の遺跡でデニソワ人が確認されることです。デニソワ2も含めてデニソワ人の遺骸はいずれも断片的なので、形態学的情報がほとんど得られておらず、またデニソワ人の考古学的文脈も不明なままです。他の遺跡でデニソワ人が確認されれば、形態学・考古学の観点からもデニソワ人の研究が大きく進展するのではないか、と期待されます。なお、本論文の題名は「第4のデニソワ人個体」となっていますが、本論文でも引用されているように(筆頭著者が本論文と同じ)、環境DNA研究の古代DNAへの応用により、デニソワ洞窟の中期更新世の堆積物からデニソワ人のmtDNAが確認されています(関連記事)。もっとも、デニソワ人の遺骸と確認されたのはデニソワ2で4個体目となるので、本論文の題名が間違っているわけではありませんが。


参考文献:
Slon V. et al.(2017B): A fourth Denisovan individual. Science Advances, 3, 7, e1700186.
http://dx.doi.org/10.1126/sciadv.1700186

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
新たに確認されたデニソワ人 雑記帳/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる