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zoom RSS スマトラ島における73000〜63000年前の現生人類の存在(追記有)

<<   作成日時 : 2017/08/12 00:00   >>

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 これは8月12日分の記事として掲載しておきます。スマトラ島の現生人類(Homo sapiens)化石の年代に関する研究(Westaway et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。現生人類の出アフリカの年代・回数・経路についてはさまざまな見解が提示されており、現生人類は東南アジア島嶼部へ遅くとも7万〜6万年前頃までに進出していた、とする早期拡散説も提唱されていますが、後期拡散説も無視することはとてもできません(関連記事)。早期拡散説の弱点は、確実な証拠のないことです。早期拡散説を示唆する人類化石もありますが、年代測定や分類に曖昧なところが残り、決定的な証拠になっていません。

 この研究が取り上げている、スマトラ島中部のリダアジャー(Lida Ajer)洞窟遺跡で発見された人類の歯の化石も、分類・年代ともに曖昧なため、東南アジアへの現生人類の進出年代に関する議論で参照されることは稀でした。この研究は、リダアジャー遺跡の人類の歯の形態と年代を再検証しています。エナメル質の厚さや他の人類の歯との比較から、リダアジャー遺跡の人類の歯は明確に現生人類のものだと位置づけられました。年代に関しては、骨に付着している堆積物と二次生成物がルミネッセンス法とウラン系列法で、共伴した哺乳類の歯がウラン系列法と電子スピン共鳴法で測定され、73000〜63000年前頃と推定されています。また、この年代は層序・古気候・当時の海水準に基づく見解とも一致する、と指摘されています。

 この年代は、現生人類の東南アジアへの早期拡散説と整合的ですが、73000〜63000年前頃という年代に関して、オーストラリア大陸には同じ頃に現生人類が存在していたとの見解も提示されているので(関連記事)、さほど驚くことではない、と本論文の著者の一人であるバーグ(Gert van den Berg)博士は指摘しています。この研究が強調しているのは、現生人類の熱帯雨林環境への進出がこれまでの想定よりもはるかにさかのぼる、ということです。これまで、現生人類の熱帯雨林環境への進出は完新世になってからだとされていました。熱帯雨林では食資源の多くが樹冠にあるので、現生人類が入手するのは容易ではないからです。近年になって、その年代が2万年前頃までさかのぼりましたが、さらにさかのぼる可能性も示唆されていました(関連記事)。

 この研究により、東南アジア島嶼部への現生人類の進出は、7万年以上前までさかのぼる可能性が高くなりましたが、こうした早期に東南アジアまで進出した現生人類が現代の東南アジアやオーストラリア(更新世の寒冷期にはニューギニアと陸続きでサフルランドを形成してい ました)の人類集団の祖先だったのかというと、まだ議論の余地はあると思います。これら東南アジアやサフルランドの初期現生人類は、絶滅したか、その後に到来した現生人類集団に交雑の結果吸収された可能性もあると思いますので、今後の新発見と研究の進展が期待されます。


参考文献:
Westaway KE. et al.(2017): An early modern human presence in Sumatra 73,000–63,000 years ago. Nature, 548, 7667, 322–325.
http://dx.doi.org/10.1038/nature23452


追記(2017年8月15日)
 本論文の要約が『ネイチャー』の日本語サイトに掲載されたので引用します。



【考古学】現生人類のインドネシア到達の歴史を書き換える化石の発見

 現生人類がインドネシアのスマトラ島に到達したのは、トバ山の壊滅的噴火より早い73,000〜63,000年前だったことを示唆する新たな化石証拠について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今から60,000年以上前に現生人類が東南アジアに存在していたことを示す遺伝学研究が報告されているが、実際の化石証拠は極めて少なく、間接的なものだった。

 スマトラ島のパダン高地にある更新世の洞窟(Lida Ajer)には豊かな多雨林動物相があり、19世紀後半に初めて行われた発掘作業でヒトの歯が2点見つかった。今回、Kira Westawayたちの研究グループは、Lida Ajer洞窟を再び調査して、これらの歯が現生人類に特有なものであることを確実に同定した上で、3種類の年代測定法を用いてこれらの化石の年代を決定して確実な年表を作成した。つまり、Westawayたちは、赤色熱発光法とpost-infrared infrared-stimulated luminescence(pIRIR)法によって堆積物の年代を測定し、この洞窟に関連する洞窟生成物の包括的な年代をウラン系列年代測定によって決めることで埋没年代を決定したのだった。

 Lida Ajer洞窟は、現生人類が多雨林環境に居住していたことを示す最古の証拠だ。海洋環境がヒトの生命維持にとって好条件であったと考えられることから、アフリカを出た現生人類が海岸に沿って移動したとする仮説が長い間有力視されている。これに対して、多雨林では、各種資源が広く分散している上に季節性があり、食料の栄養価も低いため、ヒトの定住が非常に難しいと考えられていた。多雨林環境をうまく利用するには、複雑な計画立案と技術革新が必要とされるが、Westawayたちのデータは、そうしたことが70,000年前よりもかなり前から存在していたことを示している。



追記(2017年8月17日)
 本論文が『ネイチャー』本誌に掲載されたので、以下に『ネイチャー』の日本語サイトから引用します。



人類学:7万3000〜6万3000年前のスマトラ島に初期の現生人類が存在していた

人類学:初期の現生人類がスマトラ島に住んでいた

 遺伝学的証拠は、現生人類が6万年前以前の東南アジアに存在していたことを示しているが、実際の化石証拠は少なく、間接的である。K Westawayたちは今回、以前にヒトの歯が出土したインドネシア・スマトラ島の洞窟の固結角礫岩や鍾乳石、出土した歯の標本に対して3種類の年代測定法を用いることにより、7万3000〜6万3000年前のこの地域に現生人類が存在した証拠を示している。今回の知見は、約7万3000年前にスマトラ島で起こったトバ火山の破滅的な噴火の頃に、現生人類がこの地域に居住していたことを示唆している。

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