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zoom RSS アフリカ南部における初期の顔料使用

<<   作成日時 : 2017/11/11 00:00   >>

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 これは11月11日分の記事として掲載しておきます。取り上げるのがたいへん遅れましたが、アフリカ南部における初期の顔料使用に関する研究(Watts et al., 2016)が公表されました。「現代的行動」は現生人類(Homo sapiens)にのみ見られ、現生人類とネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)など他の人類とを区別する重要な指標とされてきました。「現代的行動」とはいっても曖昧であり、今でも簡潔にして的確な定義はなされていない、と言えるかもしれませんが、最大公約数的には、象徴的思考とそれに基づく表現や高い計画性などが該当するでしょうか。「現代的行動」の指標とされる具体的な考古学的証拠としては、オーカーなどの顔料の使用(およびそれを用いて行なわれたと考えられる儀式)や、壁画・彫像・装飾品などが挙げられます。

 この研究は、南アフリカ共和国のカサパン1(Kathu Pan 1)・ワンダーワーク洞窟(Wonderwerk Cave)・キャンティーンコプジェ(Canteen Kopje)という3遺跡における顔料使用の事例を検証しています。カサパン1遺跡は、前期石器時代のアシューリアン(Acheulean)から中期石器時代への移行を示す重要な遺跡です(関連記事)。これらの遺跡の調査から、顔料使用はカサパン1遺跡でも見られるフォーレスミス(Fauresmith)文化において確認され、カサパン1遺跡の事例から不定的だとしても遅くとも50万年前頃には地域内の素材を用いて始まっていた、と推測されています。さらに、30万年前頃までには、鏡鉄鉱と赤鉄鉱といった顔料の長距離輸送(短くとも38km以上)と、広範で定期的な顔料使用があっただろう、とも推測されています。

 こうした顔料使用の社会的文脈について、この研究は「女性化粧連合」仮説と「安いが誠実な標識」仮説を検証しています。「女性化粧連合」仮説は、中期更新世(78万〜13万年前頃)におけるホモ属の脳容量の増加による出産のさいの女性のストレス増大への対処と、配偶相手の男性と自分以外の女性との性行動を阻止するための女性間連合が散発的に始まり、当初は地域内の素材を使用して月経の代理として赤色素材を優先し、やがて男性側の暴走的な性選択の抑止策としてしだいに定期的になっていき、素材が遠隔地から調達されるようにもなった、と想定しています。「安いが誠実な標識」仮説は、安上がりな費用で集団共通の自己認識と協力を促進していった、とされます。

 この研究は、検証したアフリカ南部の中期更新世の顔料使用の変化から、「女性化粧連合」仮説の方が妥当だ、との見解を提示しています。「安いが誠実な標識」仮説は、中期更新世における顔料使用については安価になる現地調達を、遠隔地素材の調達については後期更新世になってからを想定していますが、中期更新世の時点で素材の長距離調達がすでに見られる、というわけです。アフリカ南部ではなく東部の事例ですが、20万年以上前の黒曜石の長距離輸送の事例が確認されており(関連記事)、30万年前頃の顔料の長距離輸送もとくに不思議とは言えないでしょう。

 象徴的行動の少なくとも一部が50万〜30万年前頃にすでに出現していたならば、なぜ本格的な象徴的文化の確立に長い時間を要したのか、という疑問も呈されています。しかし近年では、ネアンデルタール人においても「現代的行動」の少なくとも一部が確認されており、顔料使用もその一例で、それが25万年前頃までさかのぼる可能性も指摘されています(関連記事)。象徴的行動を可能とする潜在的能力は現生人類とネアンデルタール人の共通祖先の時点ですでにかなり確立されており、人口規模やそれとも関連する他集団との接触などといった社会的要素も象徴的行動の確立に重要なのだとすると、ネアンデルタール人系統と現生人類系統とが分岐した後だろう50万年前頃のアフリカ南部において象徴的行動が散発的に見られ、ずっと年代のくだる後期石器時代や上部旧石器時代になって本格的に確立したとしても、不思議ではないと思います。また、ヨーロッパのネアンデルタール人系統における顔料使用などの「現代的行動」が、40万年前頃に散発的に確認されたとしても、不思議ではないでしょう。


参考文献:
Watts I, Chazan M, and Wilkins J.(2016): Early Evidence for Brilliant Ritualized Display: Specularite Use in the Northern Cape (South Africa) between ∼500 and ∼300 Ka. Current Anthropology, 57, 3, 287-310.
http://dx.doi.org/10.1086/686484

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