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zoom RSS カナリア諸島先住民のDNA解析

<<   作成日時 : 2017/11/03 00:00   >>

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 これは11月3日分の記事として掲載しておきます。カナリア諸島の先住民であるグアンチェ人のDNA解析結果を報告した研究 (Rodríguez-Varela et al., 2017)が 報道されました。木炭・種子・家畜の骨などの放射性炭素年代測定により、人類がカナリア諸島に最初に居住したのは紀元前5世紀と推定されています。その後、グアンチェ人は船と航海の技術を喪失したようで、紀元後15世紀にヨーロッパ人がカナリア諸島に到達して征服した時には、グアンチェ人は新石器時代のような生活を送っていたようです。

 グアンチェ人の起源については、言語学・考古学・人類学の諸研究から、北アフリカのベルベル人と密接に関連した集団ではないか、と推測されていました。グアンチェ人のDNA解析でも、その推測と整合的な結果が得られていました。グアンチェ人のY染色体ハプログループでは、ユーラシアで一般的なものだけではなく、北アフリカで一般的なものも確認されましたし、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプログループでも、北アフリカで一般的なU6bが見られました。しかし、こうした古代DNA解析はmtDNAやY染色体DNAのような母系・父系での単系統遺伝に限定されており、グアンチェ人の起源をより正確に調べるために必要な、常染色体のDNAはまだ解析されていませんでした。

 この研究は、カナリア諸島のうちグランカナリア島とテネリフェ島から、ヨーロッパ征服以前の11人のDNAを解析しました。そのうち5人の放射性炭素年代測定法による較正年代は、紀元後621±9年〜1089.4±65.5年までの範囲となります。Y染色体は3人分確定しており、いずれもE1b1b1b1a1というベルベル人によく見られるハプロタイプです。mtDNAのハプログループは11人分解析されており、いずれもユーラシアで広く見られます。Y染色体DNAにしてもmtDNAにしても、以前の研究と整合的な結果が得られました。mtDNAのハプログループのうち、11人中3人で見られたU6b1aはカナリア諸島固有で、カナリア諸島で出現したと考えられています。

 常染色体に関しては、全員解析されたものの、集団分析にじゅうぶんなだけの、ある程度以上の信頼性の結果が得られたのは5人です(網羅率0.21倍〜3.90倍)。常染色体のDNA解析の結果から、グアンチェ人は時間が経過しても遺伝的に類似しており、最も類似している現代人は北西アフリカ人であることが明らかになりました。これらの結果から、グアンチェ人の起源はベルベル人と密接に関連した集団であるという仮説が強く支持される、と指摘されています。

 また、グアンチェ人が、7000年前頃の新石器時代にアナトリア半島からヨーロッパへと移住していった農耕民と密接に関連する集団の遺伝的影響をわずかに受けているのではないか、とも推測されています。カナリア諸島は15世紀以降ヨーロッパ人の支配を受けてグアンチェ人は大打撃を受け、ほぼヨーロッパ人に吸収されたとも言えるかもしれませんが、この研究は、現代カナリア諸島の住民の常染色体においては、グアンチェ人より16〜31%の遺伝的影響が見られる、と推定しています。また、常染色体のDNA解析の結果、グアンチェ人は乳糖耐性遺伝子を有しておらず、目は茶色で髪は黒く、肌の色は薄いかやや濃いと推測されています。

 『イリヤッド』ではカナリア諸島はアトランティスの候補地とされており、主人公たちがグランカナリア島とテネリフェ島を訪れています(単行本では12巻、文庫版では8巻)。『イリヤッド』の主人公は当初、カナリア諸島はアトランティスとは無縁で、グアンチェ人は古代ユーロ・アフリカンと述べていますが(関連記事)、グランカナリア島の博物館を訪れた時には、カナリア諸島最古の住民はクロマニヨン人(Cro-Magnon)で、アトランティスと関係があるかもしれない、と意見を変えています(関連記事)。けっきょく、グアンチェ人の起源は『イリヤッド』で主人公が最初に述べた当時の通説が妥当だと改めて確認されたわけですが、『イリヤッド』が刊行当時の通説を踏まえつつ創作されていることを再確認するとともに、懐かしくなりました。また、時間を作って『イリヤッド』を再読したいものです。


参考文献:
Rodríguez-Varela R. et al.(2017): Genomic Analyses of Pre-European Conquest Human Remains from the Canary Islands Reveal Close Affinity to Modern North Africans. Current Biology, 27, 21, 3396–3402.e5.
http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2017.09.059

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