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zoom RSS スマトラ島の新種オランウータン

<<   作成日時 : 2017/11/07 00:00   >>

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 これは11月7日分の記事として掲載しておきます。スマトラ島の新種オランウータンについての研究(Nater et al., 2017)が報道されました。朝日新聞でも報道されています。この研究はオンライン版での先行公開となります。ヒトを除く現生大型類人猿(ヒト科)としては、オランウータン属(Pongo)・ゴリラ属(Gorilla)・パン属(Pan)が知られています。このうち、オランウータンはスマトラ島とボルネオ島、ゴリラは東部と西部、パン属はチンパンジーとボノボに種区分されています。オランウータン属は伝統的に、スマトラ島北部のトバ湖北側のアベリイ(Pongo abelii)とボルネオ島全域のピグマエウス(Pongo pygmaeus)という2種に区分されてきました。

 1997年になって初めて、スマトラ島のオランウータンであるアベリイの生息範囲の南側(トバ湖南側)となるバタントル(Batang Toru)地域に、それまで噂の水準でしかなかったアベリイとは異なる分類群が確認されました。行動学と遺伝学の知見から、この分類群はアベリイとは異なる種である、と以前の研究では示唆されていましたが、まだ確実な証拠は提示されていませんでした。この研究は、形態とDNA解析の結果から、このトバ湖南側のオランウータンの分類群を新種タパヌリエンシス(Pongo tapanuliensis)と命名しました。

 オランウータンは絶滅危惧種とされており、タパヌリエンシスの研究が大きく進展したのも、2013年11月に人間に殺された成体雄個体を研究者たちが分析できるようになって以降のことでした。この成体雄個体がタパヌリエンシスの正基準標本となります。形態学的には、頭蓋・下顎・歯の特徴が、この成体雄個体と33頭の成体オランウータンとの間で比較され、タパヌリエンシスが他のオランウータンとは異なる、と明らかになりました。また、タパヌリエンシスはアベリイと似た細長い体格ではあるものの、体毛はアベリイよりも細く縮れており、ピグマエウスと比較すると体毛はシナモン色が濃いことも明らかになりました。さらに、タパヌリエンシスの犬歯がアベリイおよびピグマエウスよりも発達していることも指摘されています。

 DNA解析では、37頭のオランウータンが対象となりました。ゲノム解析の結果、オランウータン3種のなかでボルネオ島のピグマエウス(Pongo pygmaeus)およびスマトラ島トバ湖南側のタパヌリエンシス(Pongo tapanuliensis)の共通祖先系統と、トバ湖北側のアベリイ(Pongo abelii)の祖先系統が338万年前頃に分岐し、674000年前頃にタパヌリエンシスの祖先系統とピグマエウスの祖先系統が分岐した、と推定されています。各系統の分岐後も、タパヌリエンシスの祖先系統はピグマエウスの祖先系統およびアベリイの祖先系統と交雑しており、タパヌリエンシスの祖先系統とアベリイの祖先系統との間では2万もしくは1万年前まで接触があった、と推測されています。

 母系遺伝のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析では、ボルネオ島のピグマエウスおよびトバ湖南側のタパヌリエンシスの共通祖先系統と、スマトラ島北部のアベリイの祖先系統とが397万年前頃に分岐し、241万年前頃にタパヌリエンシスの祖先系統とピグマエウスの祖先系統が分岐した、と推定されています。推定年代は異なりますが、この分基順はゲノム解析の結果と同じです。一方、父系遺伝のY染色体DNA解析では、タパヌリエンシスおよびアベリイの共通祖先系統とピグマエウスの祖先系統とが43万年前頃に、タパヌリエンシスおよび一部のアベリイの共通祖先系統と、その他のアベリイの共通祖先系統とが13万年前頃に分岐した、と推定されています。これは、ゲノム解析やmtDNA解析の結果とは異なる分基順で、年代もずっと新しくなっています。オランウータンは雄の方が移動範囲は広いとされているので、そうした生態やそれに起因する社会構造とも関わっているのでしょう。

 上述したように、オランウータンは絶滅危惧種とされていますが、タパヌリエンシスは現在800頭未満しか生息していないと推定されており、絶滅の危険性がきわめて高いと言えそうです。何とかオランウータン3種とも絶滅しないことを願ってはいますが、やはり最大の脅威はヒトであり、改めて人類が地球環境へ大きな負荷をかけていることを思い知らされます。まあ私も、その地球への大きな負荷のおかげで、ある程度以上快適な生活ができているわけですから、他人事のように言っている場合ではないわけですが・・・。


参考文献:
Nater A. et al.(2017): Morphometric, Behavioral, and Genomic Evidence for a New Orangutan Species. Current Biology, 27, 22, 3487–3498.e10.
http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2017.09.047

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