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zoom RSS 見直しが進む現生人類の拡散

<<   作成日時 : 2017/12/09 00:00   >>

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 これは12月9日分の記事として掲載しておきます。アジアの学際的な諸記録から、現生人類(Homo sapiens)の拡散の見直しを提言した研究(Bae et al., 2017)が報道されました。現生人類の拡散に関する古典的な仮説では、現生人類はアフリカで出現し、非アフリカ系現代人は6万〜5万年前頃のアフリカからユーラシアへの1回の移住集団にのみ起源があり、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)などユーラシア各地の先住人類と交雑することなく置換していった、とされます。

 しかし近年では、考古学・古人類学・地質年代学・遺伝学・古気候学などの諸研究成果から、こうした古典的な現生人類出アフリカ仮説の見直しが進んでいます。本論文は、学際的な研究により現生人類の拡散を見直す必要がある、と指摘しています。たとえば、現生人類がネアンデルタール人や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)やといった他系統の人類とある程度交雑していたことは、今ではほぼ通説となっています。したがって、現生人類のアフリカからの拡散にともなう、ユーラシア各地の先住人類集団との交雑のない完全置換という古典的な仮説は、今ではほぼ否定されている、と言ってよいでしょう。

 この研究はその他にも、6万年以上前のユーラシアやオセアニアにおける現生人類の痕跡が近年になって主張されているとして、現生人類の出アフリカが1回のみだったとする古典的な仮説の見直しを提言しています。たとえば、東アジアでは12万〜8万年前頃の現生人類と推定される歯が発見され(関連記事)、スマトラ島(更新世の寒冷期には、周辺の島々とともにユーラシア大陸と陸続きのスンダランドを形成していました)で発見された現生人類の歯は73000〜63000年前頃と推定されており(関連記事)、オーストラリア大陸(更新世の寒冷期には、ニューギニア島やタスマニア島とも陸続きとなり、サフルランドを形成していました)では、65000年前頃の人類の痕跡が確認されています(関連記事)。

 一方で、非アフリカ系現代人の主要な遺伝子源はアフリカからユーラシアへと6万年前頃に拡散してきた単一の集団との見解も根強くあります(関連記事)。現時点でこれを整合的に解釈すると、12万年前頃から現生人類の出アフリカの小さな波が始まり(早期拡散)、6万年前頃にアフリカからユーラシアへと現生人類の大きな拡散(後期拡散)があったのではないか、と考えられます。現生人類のアフリカからの早期拡散については不明なところが多いものの、早期拡散現生人類集団は、現代人にもわずかながら遺伝的痕跡を残している、と推定されています(関連記事)。

 この研究は現生人類の拡散に関して、行動面、とくに物質文化は、西から東へと単純に時間の経過とともに移動していったわけではない、と考古学的記録から指摘しています。この研究は、物質文化の拡散が環境と関連した可能性を検証する必要性を指摘しています。これと関連して、物質文化(考古学的記録)からも窺える、いわゆる現代的行動の問題も注目されます。現代的行動は、現生人類のアフリカからの拡散と、ネアンデルタール人のようなユーラシア各地の先住人類との「交替劇」の要因になったのではないか、との見解は根強くあります。しかし、その詳細と効果は不明で、この研究でも指摘されているように、環境への適応や現生人類と先住人類との接触にともなう行動の変容など、さまざまな観点から検証される必要があるでしょう。


参考文献:
Bae CJ, Douka K, and Petraglia MD.(2017): On the origin of modern humans: Asian perspectives. Science, 358, 6368, eaai9067.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aai9067

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