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zoom RSS 強力な侵略種としての現生人類

<<   作成日時 : 2018/01/18 00:00   >>

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 これは1月18日分の記事として掲載しておきます。「史上最強の侵略種ホモ・サピエンス」と題する記事がかつて『日経サイエンス』に掲載されましたが(関連記事)、確かに、現生人類(Homo sapiens)が強力な侵略種であることは否定できないでしょう。その記事では、現生人類の拡散に伴い、(直ちにというわけではないとしても)ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)や種区分未定のデニソワ人(Denisovan)といった現生人類と同じくホモ属の種(もしくは分類群)が絶滅し、現生人類が人類史上初めて、後期更新世にオーストラリア大陸(更新世の寒冷期にはニューギニアと陸続きでサフルランドを形成していました)やアメリカ大陸にまで拡散すると、それから間もなくして大型動物が絶滅した、と指摘されています。

 オーストラリア大陸やアメリカ大陸における後期〜末期更新世の大型動物の絶滅に関しては、人為的要因を否定する見解もあり、議論が続いています。しかし、オーストラリア大陸(関連記事)でもアメリカ大陸(関連記事)でも、大型動物の絶滅にある程度以上人為的要因があるのは確かだろう、と思います。「自然と調和してきた先住民」といった言説は、現代の環境破壊を否定する文脈でしばしば取り上げられますが、私はかなり疑問に思っています。

 ネアンデルタール人やデニソワ人といった現生人類と同じホモ属の絶滅に関しても、要因は色々と議論されており(関連記事)、現生人類との競合よりも寒冷化を重視する見解も提示されています(関連記事)。もっとも、ネアンデルタール人とデニソワ人は絶滅したとはいっても、両者のDNAは現代人にわずかながら継承されているわけで、より正確には、ネアンデルタール人とデニソワ人の形態的・遺伝的特徴を一括して有する集団は現在では存在しない、と言うべきかもしれませんが。

 ネアンデルタール人の絶滅要因に関しては、ネアンデルタール人と現生人類とはヨーロッパで短くとも数千年程度共存しており(関連記事)、現代のドイツ領域では、ネアンデルタール人は人口が最大となったすぐ後に絶滅し、同じ頃に現生人類が拡散してくる、との見解も提示されていること(関連記事)から、やはり現生人類との競合が決定的要因になったのだと思います。もちろん、現生人類とは無関係に絶滅したネアンデルタール人の地域集団もあったとは思います。

 デニソワ人に関しては、まだ南シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟(Denisova Cave)でしか発見されていないので(関連記事)、その絶滅要因をネアンデルタール人と同水準で検証することは、とても無理な状況です。ただ、ネアンデルタール人と同じくデニソワ人も現生人類と交雑しており、現代では(デニソワ人の形態的・遺伝的特徴を一括して有する集団は)存在していないわけですから、やはり、現生人類との競合が決定的な絶滅要因になった可能性は高いと思います。

 インドネシアのフローレス島で後期更新世まで存続していたホモ属であるフロレシエンシス(Homo floresiensis)は、以前には年代が2万年前以降と推定されていたので、現生人類が近隣地域に拡散してきてから数万年も共存していた事例として謎でしたが、推定年代の見直しにより、5万年前頃までに絶滅した可能性が高くなりました(関連記事)。これは、上記の「史上最強の侵略種ホモ・サピエンス」の公表以降に明らかになりました。オーストラリア大陸への現生人類の拡散は65000年前頃(関連記事)、スマトラ島への現生人類の拡散は73000〜63000年前までさかのぼる可能性が指摘されているので(関連記事)、フロレシエンシスも現生人類との競合により絶滅した可能性が高いように思われます。

 このように、現生人類は各地で同じホモ属の先住民を直接的・間接的競合により絶滅に追い込んだと考えられるのですが、競合とはいっても、具体的にどのような要因なのかというと、議論になりそうです。おそらく、現生人類と他のホモ属との潜在的(先天的)な認知能力の違いを想定する見解が最も一般的というか、有力だろうと思います。そのために現生人類は食資源の獲得などで他のホモ属にたいして優位に立った、というわけです。また、先天的な認知能力の違いはなくとも、後天的な社会的要因(集団規模の違いなどに起因する技術の優劣など)に起因する優位性を想定する見解も有力だと言えるでしょう。

 しかし、こうした能力面での優位性がとくになくとも、現生人類がネアンデルタール人を絶滅に追い込むこともあり得る、との見解も提示されています(関連記事)。現時点では、現生人類が他のホモ属を絶滅に追い込んだ具体的な要因は不明です。おそらく、他のホモ属は複合的な要因により絶滅したのでしょう。先天的もしくは後天的な要因の優劣関係が現生人類と他のホモ属との間にあった可能性は高いでしょうし、現生人類がもたらした感染症も地域によっては大きな影響を及ぼしたのかもしれません。もちろん、気候要因も考えられます。

 ヨーロッパのネアンデルタール人に関しては、48000年前頃のハインリッヒイベント(HE)5における寒冷化・乾燥化により衰退したことが、絶滅の前提になったかもしれません(関連記事)。これまでならば、そうした気候悪化に伴う衰退の後にネアンデルタール人は回復してきたのですが、ヨーロッパではHE5の後、急激に温暖化した47000年前頃に現生人類が進出してきたため、強力な侵略種である現生人類との直接的・間接的競合により、ネアンデルタール人は絶滅した、というわけです。

 これはあくまでもヨーロッパにおけるネアンデルタール人の事例で、デニソワ人やフロレシエンシスについては、また違った絶滅の様相があるかもしれません。ともかく、現生人類はある時期(10万〜7万年前頃、あるいはそれ以前?)以降、他のホモ属にたいして何らかの点で優位に立ち、強力な侵略種となったことで、他のホモ属やオーストラリア大陸・アメリカ大陸の大型動物を絶滅に追い込んだのでしょう。特定の生物種が強力な侵略者として、競合する他の生物種を衰退・絶滅に追いやった事例は地球史上珍しくないかもしれませんが、大型動物で地球規模の深刻な事例となると、現生人類が初めてではないか、と思います。

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