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zoom RSS 佐藤信弥『中国古代史研究の最前線』

<<   作成日時 : 2018/04/29 08:28   >>

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 星海社新書の一冊として、星海社から2018年3月に刊行されました。本書は紀元前21世紀〜紀元前1世紀頃までを対象に、伝世文献主体だった中国古代史研究が、近代以降に出土文献も含む考古学的研究の進展によりどのように変わってきたのか、解説しています。「**研究の最前線」というような題の一般向け書籍は、複数の執筆者で構成されていることが多いと思いますが、本書は殷王朝の前から前漢王朝末期までの約2000年間分を一人が執筆しています。しかし、本書は対象を伝世文献と出土文献および主な考古学的な遺物・遺構に限定しており、禁欲的というか、一人の執筆者の扱う範囲として良心的と言えるかもしれません。その分、期待していた環境考古学や古代DNA研究による中国古代史研究の見直しには言及されていないので、今後はそのような本・論文を少しずつ読んでいこう、と考えています。

 本書が強調しているのは、考古学的資料を文献の奴隷や脚注にしてはならない、ということです。出土文献など考古学的資料を安易に伝世文献の枠組みのなかで理解することが戒められているわけですが、これはもっともだと思います。近年、中華人民共和国では、殷よりも前の政治勢力の痕跡と思われる二里頭文化をもって夏王朝実在の証拠とし、伝世文献の夏王朝に関する記述が無批判に史料として引用される傾向もあるそうです。本書はこうした傾向に批判的で、二里頭文化を夏王朝と呼ぶことにやや慎重な姿勢を示しています。私も本書の慎重な見解に同意します。

 私は小中学生の頃に伝世文献に基づく子供向け中国史を読んで育ったので、成人後に出土文献を取り入れた研究成果に基づく一般向け書籍もそれなりに読んできたとはいえ、今でも、本書が提示するような中国古代史像には馴染めないところがあります。本書を読んで一般向け書籍としてはやや難しいのではないか、と思ってしまったのは、私の勉強不足が大きいのでしょう。とはいえ、本書の提示する中国古代史研究の最新の動向は興味深く、優先順位はそれほど高いわけではありませんが、今後も少しずつ追いかけていきたいものです。

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夏王朝の実在をめぐる議論と大化前代をめぐる議論の共通点
 夏王朝の実在認定をめぐって、日中ではかなりの温度差があったようです。佐藤信弥『中国古代史研究の最前線』(関連記事)第1章第2節によると、中国では夏王朝の実在は確実とされ、それを前提として議論が展開されているのにたいして、日本では夏王朝の実在認定に慎重だったようです。しかし、二里頭遺跡の発掘・研究が進み、原初的な王権と宮廷儀礼が成立していたと考えられ、二里頭文化の範囲がある程度まで広がっており、初期の殷に滅ぼされたと推測されることから、日本でも二里頭遺跡を夏王朝と認める研究者が増えてきてい... ...続きを見る
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2018/05/03 00:01

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