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zoom RSS 太田博樹『遺伝人類学入門 チンギス・ハンのDNAは何を語るか』

<<   作成日時 : 2018/05/20 11:59   >>

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 ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2018年5月に刊行されました。「入門」と題するように、遺伝の仕組み、さらには集団遺伝学の基礎について解説されています。「あとがき」にあるように、必ずしも「最新の知識」・「科学の最前線」を伝えているわけではありませんが、系統樹作成の方法など、「最新の知識」・「科学の最前線」を理解するのに必要な基礎的知識が解説されており、たいへん有益だと思います。今後、再読するだけの価値の高い一冊になっています。

 本書は遺伝人類学に関する基礎的な解説書となっていますが、人類史における移動の性差という著者の以前の研究に焦点を当て、大きく取り上げています。私はこの問題に強い関心を抱いているので、その点でも本書を興味深く読み進められました。本書は、妻方居住や夫方居住といった社会的要因により、人類集団の遺伝子頻度に性差が見られる可能性を指摘しています。最近の研究では、昨年(2017年)、後期新石器時代〜初期青銅器時代の中央ヨーロッパにおいては、成人女性が外部から来て地元出身の男性と結婚し、地元の女性は他地域に行って配偶者を得たのではないか、との見解が提示されています(関連記事)。

 上述したように、本書は必ずしも「最新の知識」・「科学の最前線」を伝えているわけではなく、著者の専門外とも言える化石からの人類進化史については、やや問題のある解説も見られます。ただ、そうした解説が本書の価値を大きく下げているわけではない、と思います。本書では、人類の出アフリカはホモ属のなかでもエレクトス(Homo erectus)以降で、ジャワ島のエレクトスの年代が100万〜50万年前頃とされています。しかし、ジャワ島のエレクトスの年代は150万年以上前までさかのぼる可能性が高そうです(関連記事)。

 また、エレクトスと類似するエルガスター(Homo ergaster)もアフリカに留まったとされますが、エルガスターという種区分を認めるならば、現時点でアフリカ外最古の人類となるジョージア(グルジア)のドマニシ(Dmanisi)人をエレクトスに区分するのは難しいように思います。ドマニシ人を「広義の」エレクトスに区分する見解は珍しくないと思いますが、アフリカの「本格的な」ホモ属の最初期の系統をエルガスターと認めるならば、最初期のホモ属たるドマニシ人は、エルガスター内の小柄な分類群、ハビリス(Homo habilis)、新種ゲオルギクス(Homo georgicus)のいずれかに分類するのが現時点では妥当でしょう(関連記事)。


参考文献:
太田博樹(2018) 『遺伝人類学入門 チンギス・ハンのDNAは何を語るか』(筑摩書房)

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