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zoom RSS 類人猿の新たな高解像度ゲノム

<<   作成日時 : 2018/06/08 20:35   >>

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 類人猿の新たな高解像度ゲノムを報告した研究(Kronenberg et al., 2018)が報道されました。本論文は、これまでの非ヒト霊長類ゲノムについて、その多くがヒトゲノム参照配列に依存してきたため、「ヒト化」されていることが問題だ、と指摘しています。そこで本論文は、ヒトゲノム参照配列に依存せず、ヒト2人・チンパンジーとオランウータン1頭ずつの高品質なゲノム配列を新たに決定し、既知のゴリラのゲノム配列と比較しました。これにより、じゅうらいは見落とされてきたヒトと(非ヒト)類人猿との相違もより明確になる、と指摘されています。

 注目されるのは、ヒト系統特有の挿入および欠失が17789ヶ所特定され、その中には機能的な違いをもたらすものもある、ということです。本論文は、ヒトゲノムにおいて、遺伝子を破壊すると予測される90ヶ所と、おそらく調節領域に影響を及ぼす643ヶ所の領域を同定しています。このうち、とくに注目されるのは、脳に関する領域です。ヒトと最近縁の現生種はチンパンジー(Pan troglodytes)とボノボ(Pan paniscus)ですが、本論文は、チンパンジーとヒトの脳の原形質類器官を生成し、両者の脳の違いが何に起因するのか、検証しています。

 その結果、ヒトにおいては、放射状グリア細胞から生成される神経前駆細胞に関わる遺伝子が、チンパンジーと比較してヒトでは下方制御されている、と明らかになりました。これは、遺伝子欠失による進化という仮説と整合的です。遺伝子欠失による機能的要素の喪失がヒト進化の重要な側面だった、というわけです。ヒト系統では、脂肪酸合成に関する遺伝子でも欠失が確認されています。もちろん、機能的要素の喪失のみで進化を説明できるわけではなく、興奮性神経細胞に関しては、ヒトでは上方制御が見られます。つまり、重複が進化をもたらした、というわけです。

 ヒトと(非ヒト)類人猿との比較で大きな違いとして注目されるのは、やはり脳容量です。本論文の知見は、じゅうらいの研究でも推測されていた、ヒト系統における遺伝子欠失による脳の大型化という見解と整合的と言えるでしょう。もちろん、ヒト系統に特異的な表現型は脳だけではなく、直立二足歩行への特化などもあります。それと関連して注目されるのは、チンパンジーとゴリラのナックル歩行は収斂進化だった、との見解です(関連記事)。今後、類人猿の高品質なゲノム配列の比較研究が進めば、チンパンジーとゴリラのナックル歩行の遺伝的基盤の相違も明らかになるのではないか、と期待されます。


参考文献:
Kronenberg ZN. et al.(2018A): High-resolution comparative analysis of great ape genomes. Science, 360, 6393, eaar6343.
https://dx.doi.org/10.1126/science.aar6343

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