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zoom RSS 白亜紀末の大量絶滅後の小惑星衝突地点における生態系の急速な回復

<<   作成日時 : 2018/06/14 16:40   >>

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 白亜紀末の大量絶滅後の生態系回復に関する研究(Lowery et al., 2018)が公表されました。6600万年前頃の白亜紀末の大量絶滅では、非鳥類恐竜類・翼竜類・大型海生爬虫類・アンモナイト類など、地球上の全生物種の約76%が絶滅しました。この大絶滅は、メキシコ湾南部のユカタン炭酸塩プラットフォームに小惑星が衝突して引き起こされ、現在は海底に埋もれているチクシュルーブ衝突クレーターが形成されました。

 この大量絶滅の後、全球の海洋生態系の回復(一次生産力として測定)は地理的に不均一で、メキシコ湾・北大西洋・テチス海西部における輸出生産の回復は他の多くの海域よりも遅く、後期白亜紀に近いレベルまで回復するのに30万年を要しました。クレーター付近での海洋生産力の回復の遅延は、有害金属の海水中への溶出など小惑星衝突に関連する環境要因が回復時間を制御していた、と示唆しています。衝突地点からの距離と回復時間との間にこうしたパターンが存在しなければ、観察される不均一性は、栄養段階間の相互作用・種の既存優位性(incumbency)・日和見生物による競争的排除などの、生態学的要因と「偶然」との組み合わせによる説明が最も節約的です。小惑星衝突後の海洋生産力の回復がクレーターに近いほど遅かったのかどうかという問題は、人為的に乱された生態系での今後の回復パターンの予測にも関係してきます。衝突地点からの距離と海洋生産力の回復との間に関係があるとすれば、回復速度はクレーター内部で最も遅いと予測されます。

 本論文は、チクシュルーブクレーターの内部に由来し、年代が暁新世の最初の約20万年間のものと推定される、有孔虫類・石灰質ナノプランクトン・生痕化石の変化を、生物学的活動の痕跡の化石とさまざまな元素の含有量(たとえば、地球外由来のヘリウム3の流量からは堆積速度を推定できます)と共に調べました。その結果、このクレーター内では衝突のわずか数年後に生物が再び現れ、3万年以内に生産力の高い生態系が確立された、と明らかになりました。これは、衝突地点との近接性により回復が遅れてはおらず、衝突関連の環境要因による回復の制御が存在しなかったことを示しています。白亜紀末の大量絶滅後に生産力の回復を制御していたのはおそらく生態学的な過程なので、他の急速な絶滅事象に対する海洋生態系の応答でも、これらの過程が重要であると考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【古生物学】恐竜を絶滅させた小惑星の衝突現場における生物の急速な回復

 恐竜を死滅させた小惑星の衝突現場で、生物が急速に回復していたことを報告する論文が、今週掲載される。

 非鳥類型恐竜が絶滅したことで非常に有名な白亜紀末期(6600万年前)の大量絶滅では、全生物種の75%以上が絶滅した。この絶滅事象を引き起こしたのは、ユカタン半島(メキシコ)のチクシュルーブ近くの浅海に衝突した小惑星であった。この大惨事から全球規模の海洋生態系が回復する速度は地域によって差があり、メキシコ湾と北大西洋では最長30万年かかった。これは、チクシュルーブの衝突クレーターから離れた他の地域よりもかなり遅い。そのため、有毒金属中毒のような衝突に関連する環境効果によって、衝突クレーターに近い地域での回復が遅くなった可能性がある、とする学説が提唱された。

 今回、Christopher Loweryたちの研究グループは、衝突クレーターの直下から掘削された岩石試料を分析した。この岩石試料には、衝突後20万年間の記録が保存されている。Loweryたちは、さまざまな微小化石(殻を持つ単細胞生物である有孔虫類や石灰質ナンノプランクトンなど)の変化を、生物学的活動の痕跡の化石とさまざまな元素の含有量(例えば、地球外由来のヘリウム3の流量からは堆積速度を推定できる)と共に調べた。

 Loweryたちは、この衝突クレーターでは、大惨事のわずか数年後に生物が回復し、3万年以内にはチクシュルーブに多様で生産力の高い生態系が復活しており、その速度が衝突クレーターから遠く離れた場所と比べてはるかに高かったことを明らかにした。この新知見から、生物の回復に対して衝突関連の制御は働いていなかったことが示唆される。むしろ、衝突クレーター内では生物間の相互作用のような生態学的過程が生物の回復を制御していた可能性が非常に高く、Loweryたちは、このことが同様の急速な絶滅事象に対する海洋生態系の応答を解明する上で重要だという考えを提唱している。


古生物学:白亜紀末の大量絶滅後の小惑星衝突地点における生命の急速な回復

古生物学:小惑星衝突地点での生命の急速な回復

 約6600万年前に起こった白亜紀末の大量絶滅では、非鳥類恐竜類、翼竜類、大型海生爬虫類、アンモナイト類など、地球上の全生物種の実に4分の3が絶滅した。この絶滅事象は、メキシコ湾南部のユカタン炭酸塩プラットフォームに小惑星が衝突して引き起こされたもので、この衝突によってチクシュルーブ衝突クレーター(現在は海底に埋もれている)が形成された。一次生産力が衝突前のレベルまで回復するには30万年を要したが、果たして衝突地点の状況はどうだったのか。衝突地点に近いほど回復に時間がかかったのではないかという説もあるが、C Loweryたちは今回、クレーター内部では衝突から数年以内に生命が戻っていたことを明らかにしている。チクシュルーブ衝突クレーターには、衝突からわずか3万年後に生産力の高い豊かな生態系が存在していた可能性があり、これは年代が白亜紀/古第三紀境界付近と推定される他の多くの地域での回復時間よりもはるかに早い。この結果は、クレーターとの近さが回復に対する重大な制御要因ではなかったことを示している。



参考文献:
Lowery CM. et al.(2018): Rapid recovery of life at ground zero of the end-Cretaceous mass extinction. Nature, 558, 7709, 288–291.
https://dx.doi.org/10.1038/s41586-018-0163-6

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