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zoom RSS 『コズミック フロント☆NEXT』「ネアンデルタール人はなぜ絶滅したのか?」

<<   作成日時 : 2018/06/24 18:53   >>

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 BSプレミアムでの放送を視聴しました。時間的制約があるなかで、近年の諸研究成果がよく取り込まれた構成になっていましたし、諸遺跡の映像やドラマ仕立ての再現映像には迫力がありました。最近、NHKスペシャルでもネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)が取り上げられ、なかなかよかったと思いますが、本番組はそれ以上の出来だったと思います(関連記事)。時間的制約があるので、ある見解を取り上げ、その都度異論・反論も紹介することは難しく、ある程度偏ってしまうのは仕方のないところだと思います。本番組はそれでも、かなりのところ穏当な構成になっていたと思います。以下、本番組では取り上げられなかった異論にも触れつつ、感想を述べていきます。

 全体的な構成は、前半でネアンデルタール人がどのような人類だったのか紹介し、後半でネアンデルタール人の絶滅理由を推測する、というものでした。全体的に、言語能力や象徴的行動など、じゅうらいはネアンデルタール人と現生人類(Homo sapiens)との違いが強調されていた分野でも、両者の類似性が指摘されていました。近年のネアンデルタール人見直しの傾向(関連記事)が強く反映されていたように思いますが、その傾向はおおむね妥当だろう、と私は考えています。本番組では、ネアンデルタール人のヨーロッパ進出は30万年前頃とされていましたが、43万年前頃にはイベリア半島北部に最初期ネアンデルタール人もしくはネアンデルタール人の祖先集団、あるいはそのきわめて近縁な集団が存在していたと考えられるので(関連記事)、ネアンデルタール人のヨーロッパ進出は30万年前よりもさかのぼる可能性が高いと思います。

 ネアンデルタール人の絶滅に関して本番組では、ヨーロッパでは39000年前頃までに起きた、とされていましたが、イベリア半島では37000年前頃までネアンデルタール人が存在していたかもしれない、との見解も提示されています(関連記事)。ネアンデルタール人の絶滅理由については多くの仮説があります(関連記事)。本番組では、食人説・現生人類との闘争(戦争)説・遺伝的多様性の喪失説が取り上げられていました。食人説では、ネアンデルタール人社会において食人行為が見られることから、伝達性海綿状脳症が広がり、人口が減少していき、やがて絶滅したのではないか、と想定されます。当ブログでも最近この説を否定的に取り上げましたが(関連記事)、本番組でも、ネアンデルタール人の食人行為には儀式的側面が強く、食人行為の最盛期は10万年前頃で、そもそもネアンデルタール人社会において広く食人行為が見られるわけでもないので、絶滅の要因ではないだろう、と指摘されていました。

 現生人類との闘争(戦争)説は、現生人類がヨーロッパに拡散してきた頃のネアンデルタール人遺骸に殺害の痕跡があることから主張されました。本番組では、当時は食料が豊富で土地は広かった、との理由から闘争説が否定されていました。しかし、ネアンデルタール人社会では飢餓が日常的だった、との見解も提示されており(関連記事)、現生人類がヨーロッパに拡散してきた頃のネアンデルタール人社会において食料が豊富だったのか、疑わしいと思います。ただ、当時の人口密度の低さから考えると、現生人類とネアンデルタール人との間で闘争はあったにせよ、おそらくその頻度は低く、ネアンデルタール人の絶滅要因ではなかったと思います。

 遺伝的多様性の喪失説が、本番組では有力視されています。ネアンデルタール人は過酷な環境で小集団を形成して暮らしており、近親交配を繰り返して遺伝的多様性が失われていき、病気への抵抗力が低下していった結果、人口が減少して絶滅したのではないか、というわけです。現生人類がヨーロッパへ拡散してきたさい、現生人類はネアンデルタール人社会に伝染病を持ち込み、ネアンデルタール人社会に大打撃を与えたのではないか、との見解も提示されています(関連記事)。

 ネアンデルタール人の遺伝的多様性低下の根拠として、アルタイ地域のネアンデルタール人集団では近親交配が繰り返されていた可能性がある(関連記事)、と指摘されていました。しかし、本番組では言及されていませんでしたが、クロアチアのネアンデルタール人の高品質なゲノム配列では、近親交配の痕跡は見られませんでした(関連記事)。おそらく、人口密度の点から考えても、ネアンデルタール人社会において近親交配の頻度は現代社会よりも高かったのでしょうが、それでも、一般的とまでは言えないのかもしれません。

 ただ、近親交配が一般的ではなかったとしても、ネアンデルタール人の遺伝的多様性が現代人より低かった可能性は高いと思います。もちろん、現時点でのネアンデルタール人の遺伝的多様性は、あくまでもDNA解析に成功したごく少数の個体に基づくもので、今後増加していく可能性は高いでしょう。しかし、長期の年代ではなく、ある時点での遺伝的多様性では、人口比からいって、ネアンデルタール人の遺伝的多様性は現代人より低かったでしょう。本番組でも、ネアンデルタール人は何度も寒冷化のような厳しい環境を経験してきた、と指摘されていましたが、そのさいにある地域集団が絶滅したことも珍しくなかったのではないか、と思います。じっさい、西方の後期ネアンデルタール人集団の間では、相互に移動・置換があったのではないか、と推測されています(関連記事)。

 おそらく、ネアンデルタール人は移住・撤退・再移住といった過程を繰り返しており、寒冷期に人口が減少し、温暖期に人口が増加したのではないか、と思います(関連記事)。この過程で、ボトルネック(瓶首効果)によりネアンデルタール人の遺伝的多様性は低下します。また、ネアンデルタール人は複数の小規模集団に細分化されていき、集団間相互の交流は稀だった、との見解も提示されています。おそらく、ネアンデルタール人の個々の集団の遺伝的多様性はかなり低かったのでしょう。

 それでも、他に強力な競合者がいなければ、寒冷期に減少したネアンデルタール人は温暖期には人口が増加し、その繰り返しで数十万年にわたってヨーロッパで存続してきたのでしょう。しかし、48000年前頃のハインリッヒイベント5における寒冷化・乾燥化によりヨーロッパのネアンデルタール人の人口が減少した後、ヨーロッパには現生人類という強力な競合者が拡散してきた、と推測されています(関連記事)。じゅうらいは、ヨーロッパには競合者がいなかったので、ネアンデルタール人の人口は温暖期には増加していったのですが、他集団とのつながりなどの社会組織や技術革新の点で現生人類がネアンデルタール人にたいしてわずかでも優位に立っていたのだとしたら、ネアンデルタール人は最終的に現生人類への吸収・同化も含む形で敗北し、絶滅したのかもしれません。

 もっとも、ネアンデルタール人の絶滅とはいっても、ネアンデルタール人のDNAは非アフリカ系現代人にわずかながら継承されているわけで、より正確には、ネアンデルタール人の形態的・遺伝的特徴を一括して有する集団は現在では存在しない、と言うべきかもしれません。本番組でもネアンデルタール人と現生人類との交雑が取り上げられていましたが、ドラマ風の再現映像では、ネアンデルタール人男性と現生人類女性との間に娘が生まれた、という演出になっていました。ネアンデルタール人と現生人類との交雑においては、本番組の再現映像のように、ネアンデルタール人男性と現生人類女性との組合せだった、との理解が一般には根強いように思えますが、交雑の組合せに性的非対称があったのか、現時点では不明だと思います(関連記事)。

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