ルーマニアの3万年前頃の人骨

 ルーマニアのPestera Muierii洞窟で発見された人骨は、年代測定の結果、3万年前頃のものだと判明した、との報道がありました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/6099422.stm
 この洞窟からは、1952年以降、人骨が発見されているのですが、セントルイスのワシントン大学のエリック=トリンカウス教授とその同僚が、人骨から直接試料を採取して分析した結果、3万年前頃と判明した、とのことです。
 また、トリンカウス教授の分析によると、形態的には現生人類の特徴が認められるが、一方で、後頭骨の隆起や下顎骨や肩甲骨の形態に、ネアンデルタール人の特徴も認められる、とのことです。こうした特徴から、トリンカウス教授らは、現生人類が欧州に進出したさい、先住のネアンデルタール人との間に全面的な置換があった、とする見解は成立しない(つまり、ネアンデルタール人と現生人類との間に混血があった、ということです)、と結論づけています。
 しかし、ロンドン大学ロイヤルホロウェィカレッジのクライヴ=ギャンブル教授は、欧州の初期現生人類には頑丈型の人骨が少なからずあり、それがアンデルタール人と現生人類との間に混血のためなのか、それとも元来そうだったのか未確定だとして、混血説には慎重です。

 ネアンデルタール人研究の世界的権威であるトリンカウス教授は、ポルトガルのラガー=ヴェルホで発見された幼児人骨についても、ネアンデルタール人と現生人類との混血を示すもの、としていますが、賛同者は少ないようです。
 東欧のネアンデルタール人や初期現生人類の中には、両方の特徴をもっているとの解釈も可能な人骨が少なからずあり、更新世東欧の人骨の研究者の中には、現生人類による全面置換に疑問をもっている人が少なくありません。
 ネアンデルタール人的特徴が強いと思われる人骨から現生人類型のミトコンドリアDNAが、あるいは、現生人類的特徴が強いと思われる人骨からネアンデルタール人型のミトコンドリアDNAが検出されれば、混血説の証拠になるでしょうが、おそらく両者の混血は、あったとしても稀だったと思われるので、ミトコンドリアDNAの研究からは、今後も混血説の証明は難しいでしょう。
 私は、数年前より混血説に傾いているので、現在進行中のネアンデルタール人のゲノム解読の成果に期待しています。解読終了後、現代人との比較により、ネアンデルタール人と現生人類との間に、わずかながらでも混血があったか否か、ある程度見通しが立つのではないか、と思います。


参考文献:
Soficaru A, Doboş A, and Trinkaus E.(2007): Early modern humans from the Peştera Muierii, Baia de Fier, Romania. PNAS, 103, 46, 17196-17201.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0608443103

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