16万年前頃の化石の成長速度は現代人と同じ

 ドイツのライプツィヒにあるマックスプランク進化人類学研究所などの国際研究チームの研究により、モロッコで1968年に出土した16万年前頃のホモ=サピエンス(現生人類)の歯の化石(7~8歳頃と推測されています)を分析したところ、現代人と同じ成長速度だったということが判明し、報道されました。
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2007/312/1
この論文は、『全米科学アカデミー紀要』に掲載されます。

 この分析では、‘synchrotron microtomography’という新しい技術が用いられました。これは、X線画像により、エナメル質形成の過程で子供の歯に刻まれる成長線を明らかにするものです。その結果、この子供の成長速度は現代欧州の子供と変わらないという結論が得られました。
 成人になるのに要する期間は、現代人ではほぼ18年なのにたいして、現代人の祖先と考えられているアウストラロピテクス=アファレンシスが12年、初期ホモ属が14~16年とされていますから、成人までに要する期間の長さは現生人類の特質であり、これがネアンデルタール人との生存競争で有利に働いた可能性もある、と指摘されています。

 私は不勉強なもので、モロッコの16万年前頃の現生人類人骨というと、ジェベル=イルード出土のものしか思い浮かばなかったのですが、1968年出土だったか、子供の人骨があったのか、年代はどこまで絞り込まれているのか、現生人類と確定しているのかなど、確認できていないことも多いので、より詳しい情報を得たら、この記事に追記するか、改めて別の記事に掲載しようと思います。
 成人までに要する期間の長さは、確かに現生人類の重要な特徴の一つといえそうですが、これがネアンデルタール人との生存競争で有利に働いたという解釈が妥当かというと、疑問もあります。現生人類のアフリカ単一起源説が優勢となって以降、ネアンデルタール人と現生人類との違いを強調する研究が相次ぎ、ネアンデルタール人の成長は、現生人類はもとより、両者の共通祖先と考えられるハイデルベルゲンシスよりも速かった、とする見解が優勢になりました。
 しかし昨年、ネアンデルタール人の成長速度は現代人と変わらないという研究が発表され、このブログでも紹介しました。
http://sicambre.at.webry.info/200612/article_10.html
おそらく、ネアンデルタール人と現生人類の共通祖先と考えられるハイデルベルゲンシスの時点で、すでに成長速度は現代人とあまり変わらなかった可能性が高いのではないでしょうか。ネアンデルタール人が絶滅し、現生人類が大繁栄したのは、成長速度ではなく、別の要因のためではないかと思います。

追記(2007年3月21日)
 分析した人骨は、やはりジェベル=イルード出土のものとのことです。

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