中国で現生人類の人骨発見

 北京近くの周口店洞窟で、42000~39000年前頃の一人の人間のものである骨片34個が2003年に発見され、その研究成果が発表された、との報道がありました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/6518527.stm
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2007/402/2
この論文は、『全米科学アカデミー紀要』に掲載されます。

 更新世後期の東アジアの人骨は少なく、ひじょうに貴重な発見と言えますが、年齢は40~50代で、性別は不明とのことです。また、論文の著者トリンカウス教授の指摘で面白いのは、この人物が靴を履いていた可能性があることで、靴の使用が人類の体格を華奢にした一因ではないか、とも推測されています。

 この人骨は基本的には現生人類の特徴を示していますが、比較的大きな前歯など、「原始的」な特徴も備えていて、トリンカウス教授は、アフリカ起源の初期現生人類とユーラシアの先住人類(たとえば、欧州ではネアンデルタール人)との混血を証明するものではないか、と指摘しています。

 ただ、こうした「原始的」特徴は祖先から継承したものだ、との反論も有力です。かつて、更新世前期~現代の東アジアの人骨に見られるシャベル状切歯は、東アジアにおける人類の連続性を示しているとされ、多地域進化説の根拠とされていたのですが、現代では、シャベル状切歯は更新世のどの地域の人類にも見られる原始的形質とされていて、東アジアにおける人類の連続性を証明する根拠ではない、とする見解が有力です。

 ネアンデルタール人研究の世界的権威であるトリンカウス教授は、いわば混血主義者といった感があり、欧州の「やや古代的な」人骨を、やたらとネアンデルタール人と現生人類との混血の結果と認定する傾向があり、その一例はこのブログでも紹介したことがありますが、
http://sicambre.at.webry.info/200611/article_4.html
東アジアについても同様の見解を主張していくようです。

 トリンカウス教授は、この周口店の人骨に見られるような「原始的な」特徴が、現生人類誕生の地とされる東アフリカの初期現生人類には見られないことを、混血の根拠としているのですが、そもそも東アフリカの初期現生人類人骨は少なく、発掘が進めば、こうした「原始的」特徴を備えている初期現生人類の人骨が東アフリカで発見される可能性は、けっして低くないでしょう。

 以上、トリンカウス教授の主張に否定的な見解を述べてきましたが、現在の私の考えはトリンカウス教授の見解に近いものがあり、現代人の基本的な特徴はアフリカ起源の初期現生人類に由来するが、現生人類が世界各地に移住する過程で、頻度は地域ごとに異なるものの、現生人類と先住人類との間に混血があった、と考えています。もっとも、どこでも数的には現生人類のほうが圧倒的に優勢で、混血はめったになかったと考えています。つまり、各地の混血頻度の違いとはいっても、低水準での相対的な差にすぎない、との見解です。

 ゆえに、東アジアでも混血の可能性を一応認めてはいるのですが、その場合、混血した東アジアの先住人類とはどのような集団だったのか、気になるところです。かなり早い時点でアフリカから東アジアに進出した人類(エルガスターまたはエレクトス)の子孫なのか、もっと現代人に近づいたハイデルベルゲンシス(的な人類)の子孫なのか、あるいは、東アジアに進出したエレクトスとハイデルベルゲンシスとの間に混血があり、その子孫なのか、さまざまな可能性が考えられます。

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