『イリヤッド』の検証・・・人類の禁忌について(2)

 前回
http://sicambre.at.webry.info/200707/article_15.html
の続きです。

 前回私は、ネアンデルタール人が現生人類に語ったある教えは、現生人類を絶望させるものだったため、人類の禁忌とされたのだ、と推測しました。多少新たな考えを盛り込みつつ、前回の推測をまとめると、
●現生人類は最初から高度な知性を備えていたわけではなく、ネアンデルタール人にそれを教えられた。最初に神に選ばれた(高度な知性を備えた)のはネアンデルタール人であり、現生人類ではなかった。
●ネアンデルタール人や現生人類だけではなく、狒狒のような他の動物も神に選ばれることを、現生人類はネアンデルタール人から教えられた。最初に神に選ばれたわけでもなく、次に別の動物が神に選ばれることもあるので、現生人類は特別な存在ではない。
●神に選ばれたとしても絶滅を避けられるわけではない、と現生人類はネアンデルタール人に教えられ、ネアンデルタール人自身がその実例となったため、ネアンデルタール人の教えは現生人類にとって真実と考えられたが、現生人類が文字をもったのはかなり後のことであり、ネアンデルタール人の教えはしだいに忘れ去れていった。
●しかしアトランティス文明においては、ネアンデルタール人の滅亡から文字を使用し始めるまでの期間が他の地域よりもずっと短かったため、ネアンデルタール人の教えとネアンデルタール人が絶滅したことを、唯一はっきりと文字の形で伝えてきた。当初は、秘密結社に属する一部のアトランティス人のみがそのことを知っていたが、文字の形ではっきりと残したため、やがて多くのアトランティス人がネアンデルタール人の教えを知ることになり、自らの未来に絶望して夢を見なくなるとともに、攻め滅ぼされることになった。
●秘密結社は、アトランティス人が伝えてきた真実を人類が知れば、信仰しても無駄だと人類が考えて信仰心が失われ、人類社会の秩序が乱れることを恐れているのではないか、と思われる。
となります。

 今回は、この推測が妥当かどうか、作中で提示された説話のうち、人類の禁忌と関係ありそうなものと照らし合わせて、検証していくことにします。とはいっても、作中で提示された説話はかなりの数になりますので、今回は、5月25日分の記事
http://sicambre.at.webry.info/200705/article_25.html
において、人類の禁忌と関係がありそうだと考えた
(A)「柱の王国」以外の、ギリシアのミハリス=アウゲリス編纂の『イソップ物語』の説話
(B)出雲民話
(C)アフリカのコイ族の伝説
の三つの説話を取り上げることにしますが、まずは、それぞれの説話について粗筋を紹介しておきます。

(A-1)朝は鷲。昼はライオン。夜は人間の女。明け方に山から来た三本足の怪物に殺されるもの、なあに?
(A-2)キリギリスは夜空を飛ぶコウモリにいった。「コウモリさん、コウモリさん、お願いです。満月がまぶしすぎて眠れません。どうか月を齧ってくれませんか?」
コウモリはいった。「お安い御用だ」
だがコウモリが月を齧ってしまうと、キリギリスは死んでしまった。
(A-3)気まぐれな月は闇夜にいつも形を変え、時には姿を隠しました。怒った村人はみんなで相談し、猟師に頼んで月を黒い壁に打ちつけてもらいました。

(B-1)兎の住む鉄のある豊かな山を欲しがった川下の神様が、兎を騙して捕えて火あぶりにしたところ、真っ赤に身を焼かれながら兎が足を踏み鳴らし、大地に地震がおきて川は氾濫し、神様は土地を失って逃げ出した。兎はその後山にこもって、時おり真っ赤に焼けただれた姿で村人を呪ったり、村人の姿を消したりする。
(B-2)出雲人は最初の日本人でありながら何もせず、次に来た人々に都市を明け渡したので、赤兎はそのことを怨んでいる。

(C)月が欠けても甦るように、人もまた甦るという真理を人に伝えるよう、月から仰せつかった兎は、月は甦るが人は甦らない、とうっかり逆のことを伝えてしまい、その結果人は死すべき運命になった。

 まずは(A-1・2・3)です。赤穴博士によると、初期の農耕民族にとって、月は太陽よりもじゅうような神でした。ですから、(A-2・3)も、人類の禁忌またはアトランティスにまつわる謎の手がかりになるのかと考えていたのですが、あるいはたんに、(A-1)も含めて、3巻における入矢とコーの行動を、伝説になぞらえるために創作された話なのかな、という気もします。
 『イリヤッド』においては、この他にも、作中の人物の行動が神話・伝説(作中での創作の場合も、そうでない場合もあります)になぞらえられている場合があり、たとえば10~11巻におけるバシャの行動は、ヘラクレス神話になぞらえられています。判断の難しいところですが、(A-1・2・3)は人類の禁忌の手がかりではない、というのが現時点での考えです。

 次に(B-1・2)の出雲民話です。これは「柱の王国」と似た構造の民話で、基本的には、アトランティス滅亡の様相を抽象的に語り伝えた物語なのかな、と思います。その意味で、人類の禁忌の直接の手がかりにはならないかな、と思いますが、「柱の王国」にはない、騙まし討ちという要素が気になります。
 以前は、騙まし討ちでアトランティス文明を滅ぼし、その文化を奪って発展したのが現代につながる古代文明であり、そのことが人類の禁忌になったのかな、とも考えました。しかし、アトランティスが滅びたこと自体は、どうも人類の禁忌ではないようです。出雲民話も、人類の禁忌の手がかりではないかな、というのが現時点での考えです。「柱の王国」については、次回以降に取り上げることにします。

 最後に、(C)アフリカのコイ族の伝説です。5月25日分の記事において、コイ族の伝説は人類の禁忌の核心に迫るものではないか、と述べました。しかし、コイ族の伝説は抽象的な物語なので、具体的に何を意味しているのか分からず、人類の禁忌のじゅうような手がかりである可能性がある、との指摘にとどまってしまいました。今でも、コイ族の伝説の意味するところはよく分からず、これが人類の禁忌の手がかりなのかというと、疑問もあります。
 あえて推測すると、このコイ族の伝説は、ネアンデルタール人が現生人類に語った「真実」があまりにも衝撃的だったので、「真実」が曲げられて後世に伝えられたことを象徴しているのかもしれません。入矢の解釈通り、兎がイベリア族の象徴だとすると、アトランティス文明の影響を受け、人類の禁忌である「真実」を知ったイベリア族は、地中海・欧州各地に巨石文明を広める過程で、「真実」を曲げて伝えたということになります。ただ、このコイ族の伝説は、かなり起源が古そうなのが気になるところです。とりあえず、今回はここまでとし、次回は他の説話について検証していくことにします。

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