テウク=ヤコブ博士死去

 インドネシアの古人類学界の大御所であったテウク=ヤコブ博士(ガジャマダ大学)が、肝疾患のため76歳で亡くなった、と報道されました。ご冥福をお祈りいたします。2003年にインドネシア領フローレス島のリアン=ブア洞窟で発見された更新世の人骨群は(発表は2004年)、インドネシア考古学センターの保管所から、発掘に関わっていないヤコブ博士の研究室に運ばれました(2004年11月下旬)。2005年2月末に人骨群は考古学センター保管所へ返還されましたが、正基準標本が破損していたために問題となりました。

 こうした経緯から、ヤコブ博士は他の研究者たちから批判されることになりました。この報道は、「人骨を盗んだ」とか「悪名を得た」とか「1970年代以降重要な発見をしていなかった」など、ヤコブ博士への悪意に満ちたものになっていますが、ヤコブ博士にそのように解釈されかねないところもあったのは否定できないようです。

 ただ、ヤコブ博士にも言い分があったようです。「白人」研究者が、植民地支配的な感覚で長年にわたってインドネシア人の研究者を除外・軽視し、貴重なインドネシアの化石人骨を研究・発表してきたことにたいする強い反発が、ヤコブ博士にはあったとのことです(『別冊日経サイエンス 人間性の進化』P81)。もっとも、それがヤコブ博士の行為を正当化することにはならないと思いますが。

 ヤコブ博士は、リアン=ブア洞窟で発見された更新世の人骨群は人類の新種ホモ=フロレシエンシスではなく、小頭症の現生人類であるという見解の旗頭的存在でしたが、今年9月22日分の記事で述べたように、この人骨群は新種である可能性が高そうです。リアン=ブア洞窟の更新世の人骨群をめぐる、新種か小頭症の現生人類かという激論がほぼ決着しつつある現在、現生人類説の代表的存在でもあったヤコブ博士の訃報は、現生人類説の劣勢を印象づけるような感も受けました。

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