50万年前までさかのぼった結核の症例と人類の環境への適応

 トルコで発見された51~49万年前頃の人骨(年齢は15~40歳)は、結核に感染していたとの研究報道されました。なお、表題ではこの人骨はエレクトスとされていますが、種区分の問題とも関連して、分類について異なる見解もありえると本文中で指摘されています。たとえば、ハイデルベルゲンシスもその候補となりますが、一応ここではエレクトスということにしておきます。

 種区分の問題はともかくとして、この研究で興味深いのは、50万年前頃のトルコの人骨に結核性軟膜炎の症状が認められることです。体内に取り入れる紫外線の量が減ると、体内で合成されるビタミンDの量も減少しますが、このビタミンD欠乏により、結核性軟膜炎は悪化します。紫外線はビタミンDを合成しますが、その一方で皮膚癌の可能性も高めます。

 紫外線の吸収については、肌の色が密接に関わっています。肌の色が濃いと紫外線の吸収が妨げられます。したがって、紫外線の強い低緯度地域では濃い色の肌が適応的で、紫外線の弱い高緯度地域では薄い色の肌が適応的となります。エレクトスはアフリカで誕生したので、肌の色は濃かったと思われます。

 この50万年前頃のトルコのエレクトスも肌の色が濃く、そのために結核性軟膜炎が悪化したのではないか、という可能性を研究者は指摘しています。もっとも、本当にこのトルコのエレクトスも肌の色が濃かったかは、定かではありません。しかし、その可能性はけっして低くないでしょう。

 人類が高緯度地域に進出するにあたっては、肌の色の濃さが障壁となったでしょうから、たとえば欧州の北部にまで進出して長期間居住し続けた人類の多くは、どこかで肌の色が薄くなったものと思われます。じっさい、今年10月26日分の記事で紹介したように、ネアンデルタール人も肌の色が薄かった可能性が指摘されています。

 おそらく、一時的に高緯度に進出しながら、肌の色が濃かったために絶滅した人類集団も少なからずいたのでしょう。人類史においては、そのように無数の失敗が繰り返されてきたのだと思います。しかし、現在その痕跡を見出すのは容易ではないので、推測するしかないところが多分にあるのは、仕方のないところでしょう。


参考文献:
John Kappelman, Mehmet Cihat Alçiçek, Nizamettin Kazanc, Michael Schultz, Mehmet Özkul, and SevketSen.(2008): First Homo erectus from Turkey and implications for migrations into temperate Eurasia. American Journal of Physical Anthropology, 135, 1, 110-116.
http://dx.doi.org/10.1002/ajpa.20739

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