ハインリッヒ=シュリーマン『シュリーマン旅行記 清国・日本』(9刷、講談社)

 石井和子訳で、講談社学術文庫の一冊として2000年11月に刊行されました。1刷の刊行は1998年4月です。1865年、43歳のシュリーマンは世界漫遊に旅立ち、清朝末期の中国と幕末の日本を訪れています。本書はたんなる旅行記ではなく、当時の日中文化比較論としても、たいへん興味深いものです。

 全般に、シュリーマンは当時の中国には厳しい評価をくだしていますが、その主要な基準は清潔度にあります。シュリーマンは、当時の中国はたいへん不潔だと述べている一方で、日本は世界でもっとも清潔な国民である、と評価しています。また、役人の倫理観についても、中国よりも日本のほうが潔癖だと評価しており、日本は心身ともに清潔である、との印象をシュリーマンは抱いていたようです。

 シュリーマンは日本の物質文化についても、欧州と比較して質素な面があるとはいえ豊かであり、手工芸の水準を高く評価しています。また、日本の物質文化の質素さを、必ずしも貧しさ・克服すべきものと認識するのではなく、欧州も見習うところがあるのではないか、と考えています。

 シュリーマンは、文明を物質的な意味でとらえるのならば、日本人はきわめて文明化されていると述べている一方で、文明を宗教的な意味合いでとらえれば、日本人は少しも文明化されていない、と述べています。しかし、その場合の宗教とはキリスト教的な理解によるものだとの前提を述べています。

 本書を読む前までは私には偏見があり、当時の教養のある欧州人のほとんどは、欧州的な価値観でアジアを評価し、婉曲的な表現だとしても、欧州の優越感をにじませるような文章を残すものかと思っていましたが、シュリーマンにはそうした偏見が意外なくらい少ないようで、驚かされました。私の不勉強もあるのでしょうが、欧州中心主義の問題については、もっと本を読んで調べる必要がありそうです。

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