フロレシエンシスとエレクトスやハビリスとの類似性

 インドネシア領フローレス島で発見された更新世の人骨LB1は、頭蓋の比較からはエレクトスやハビリスとの類似性が認められる、との研究(Gordon et al.,2008)が『米国科学アカデミー紀要』に掲載され、報道されました。オンライン版での先行公開で、まだ要約しか読んでいませんが、半年後には全文を読めるようになるので、そのときにまた改めて全文を読もうと思います。

 この研究では、これまでのLB1にかんする研究では分析対象とされてこなかった、頭蓋や後頭部の形態について、他の人骨と比較されています。そのために、2524人分の現生人類と、30人分のさまざまな種のホモ属のデータが集められ、頭蓋の高さや頤の有無のような頭骨にかんする6分野の測定値が分析されました。その結果、LB1は健常な現生人類の範疇には収まらず、170万年前頃のホモ=エレクトスやホモ=ハビリス(アウストラロピテクス属に分類されることもあります)と類似していることが判明しました。また、小頭症や他の病気により、現生人類の頭骨がエレクトスやハビリスのような古いホモ属やLB1のそれと類似することはありそうにない、ともされています。

 これにたいして、この研究には小頭症にかんするデータがまったく含まれていないという欠陥がある、と神経生物学者のクリストフ=ゾリコファー博士は指摘しました。この論文の著者の一人であるアダム=ゴードン博士は、刊行されている小頭症患者のデータには6分野の測定値が含まれていなかった、と答えました。しかしゾリコファー博士は、この研究の6分野での測定は頭骨の複雑さを測定するには簡単すぎる、と指摘しています。またゾリコファー博士は、この研究のような分析手法では、じっさいには異なる頭骨を類似したものとみなすかもしれず、LB1とチンパンジーとの類似性を見出す結果になるかもしれない、と警告しています。

 今年3月7日分の記事今年3月13日分の記事で取り上げたように、このところ、LB1は現生人類との見解が相次いで提示されていました。しかし両方の記事で述べたように、LB1現生人類説は必ずしも説得的ではなく、LB1はホモ属の新種フロレシエンシスだろう、との見解は変えませんでした。その意味で、この研究は私にとって歓迎すべきものではあります。また、フロレシエンシスの祖先を初期エレクトスまたはハビリスと結びつけるような分析も、私のこれまでの考えとおおむね一致します。ただ、ゾリコファー博士の指摘にあるように、この研究に問題があるのも否定できず、今後は小頭症の現生人類との大規模な比較も進められる必要があるでしょう。


参考文献:
Gordon AD, Nevell L, and Wood B.(2008): The Homo floresiensis cranium (LB1): Size, scaling, and early Homo affinities. PNAS, 105, 12, 4650-4655.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0710041105

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