チャデンシスとバーエルガザリの年代

 チャドのジュラブ砂漠で発見された、サヘラントロプス=チャデンシスとアウストラロピテクス=バーエルガザリの年代についての研究(Lebatard et al.,2008)が公表されました。これまで両者の年代については、両者の前後の層で発見された動物骨からの推定年代が採用されていて、曖昧なところがあっただけに、重要な成果と言えそうです。

 チャドでは火山灰層が見つかっていないので(河合.,2007,P21)、アルゴン-アルゴン法を使うことができません。そのため、この研究ではベリリウム10法が用いられて年代が測定されましたが、その年代はこれまでの推定値と矛盾するものではありませんでした。ただ、ベリリウム10法の信頼性はアルゴン-アルゴン法ほど高くはないので、今後さらなる検証が必要になるでしょう。

 両者の具体的な年代ですが、チャデンシスの出土した層の上層は683±45万年前、下層は712±31万年前という測定結果になり、チャデンシスの年代は704±18万年前と推定されました。そのため、人類の系統とチンパンジーの系統との分岐年代は、800万年前を大きく下ることはなく、1000万年前頃にすでにゴリラの祖先が存在していた(ゴリラの祖先系統とチンパンジー・人類の祖先系統とがすでに分岐していたことになります)とする研究(Suwa et al.,2007)とも整合的だ、と主張されています。

 一方バーエルガザリの出土層の年代は358±27万年前という測定結果になり、アウストラロピテクス=アファレンシスと同年代であることが強調されています。アファレンシスについては、タンザニアのラエトリ出土のものが370~350万年前頃、エチオピアのハダール出土のものが340~300万年前頃とされていますが、バーエルガザリは独立した種ではなく、アファレンシスの範疇に収まるとの見解もあります(諏訪.,2006)。


参考文献:
Lebatard A-E. et al.(2008): Cosmogenic nuclide dating of Sahelanthropus tchadensis and Australopithecus bahrelghazali: Mio-Pliocene hominids from Chad. PNAS, 105, 9, 3226-3231.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0708015105

Suwa G. et al.(2007): A new species of great ape from the late Miocene epoch in Ethiopia. Nature, 448, 921-924. 、関連記事
http://dx.doi.org/10.1038/nature06113

河合信和(2007)『ホモ・サピエンスの誕生』(同成社)、関連記事

諏訪元(2006)「化石からみた人類の進化」『シリーズ進化学5 ヒトの進化』(岩波書店)、関連記事

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