日中歴史共同研究にたいしての日本人研究者の違和感

 『史学雑誌』恒例の「回顧と展望」の今年の号(第117編第5号「2007年の歴史学界」)の総説の担当者は、日本中世史研究者の村井章介氏です。村井氏は、日中歴史共同研究の古代・中近世史分科会の途中から参加したのですが、中国側の発言には違和感を禁じえなかったとのことです。

 論文や意見の交換はそれなりに有意義だったと思うが、会合は儀礼的なやりとりに時間を費やし、フランクな意見交換の場であったとは言いがたい。とくに意外だったのは、両国関係のなかで対立や衝突の目立つ時期はなるべくとりあげないで、友好を強調すべきだ、という中国側の発言であった。具体的な歴史事象としては、遣唐使が突出していた。この共同研究を政治・外交レベルでの友好ムードに奉仕するものとしたい、という意図がかいま見え、学問の政治からの独立を旨とする立場からは、違和感を禁じえなかった。

 これは、政治体制の違いもありますが、本質的には、ポストモダン社会に突入した日本と、モダン社会にいる中国(地域によっては、モダン社会に突入したばかりというところもあるでしょう)との違いに問題がある、と考えるべきでしょう。日中の間で共通の歴史認識の形成が必要だと主張する場合は、こうした事情もじゅうぶんに考慮すべきでしょう。


参考文献:
『史学雑誌』第117編第5号(2008年)

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