テシク=タシュの子供の人骨の見直し

 ウズベキスタン東部のテシク=タシュ遺跡で1938年に発見された子供の人骨(7万年前頃)を再分析した研究(Glantz et al., 2008B)が公表されました。この子供の人骨については、初期現生人類との類似性が指摘されたこともあるものの、ネアンデルタール人と分類する見解がずっと主流でした。

 しかしこの研究では、テシク=タシュの子供の人骨の頭蓋・下顎と、ネアンデルタール人・中部および上部旧石器時代の現生人類・最近の子供(亜成体)のそれとの比較の結果、テシク=タシュの子供は、頭蓋の分析では上部旧石器時代の現生人類と同じ集団に、下顎の分析では最近の子供と同じ集団に分類されました。

 こうした分析結果からこの研究では、テシク=タシュの子供の人骨の形態学的位置づけは曖昧だと示唆され、この地域でのさらなる子供の人骨の発見・分析が必要になる、と提言されています。今年4月には、テシク=タシュの子供の前頭骨の形態が、古典的ネアンデルタール人と初期現生人類との中間に位置すると報告されており(Bulygina et al., 2008)、テシク=タシュの子供の人骨の形態学的位置づけはなかなか難しいようです。

 ただ、ミトコンドリアDNAの分析からは、テシク=タシュの子供はネアンデルタール人に分類されています(Krause et al.,2007A)。そうすると、ネアンデルタール人の形態面での多様性などが考えられますが、テシク=タシュの子供の人骨については、古生物の種区分の難しさが現れている一例とも言えそうです。今後は、遺伝学と形質人類学のそれぞれの研究成果を蓄積していき、総合的に解釈していく必要があるでしょう。


参考文献:
Bulygina E, and Gunz P.(2008): Mousterian children from Teshik-Tash and Staroselie: a 3D geometric morphometric analysis. The 77th Annual Meeting of the AAPA.
関連記事

Glantz M. et al.(2008B): Is Central Asia the eastern outpost of the Neandertal range? A reassessment of the Teshik-Tash child. American Journal of Physical Anthropology, 138, 1, 45-61.
http://dx.doi.org/10.1002/ajpa.20897

Krause J. et al.(2007A): Neanderthals in central Asia and Siberia. Nature, 449, 902-904.
http://dx.doi.org/10.1038/nature06193
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