先コロンブス期のアマゾンにおける複雑な社会と大規模な環境開発

 アマゾン川の支流の一つであるシングー川上流には、先コロンブス期に人口密度の高い集落が存在しており、大規模な環境開発が行なわれていた、との研究(Heckenberger et al., 2008)が報道されました。これまで、この遺構は原生林だと考えられていたのですが、実は先コロンブス期の人間が大規模に手を加えていた、というわけです。

 この遺構は、大きな壁によって囲まれている60ヘクタールの「町」と、熱帯雨林のほうに向かって広がっている、それよりも小さい複数の村などから形成されており、これらの居住地は格子状に整備されていました。この地域がかつては複雑な道路網で連結されていたことや、農業のみならず、養殖業のためと思われる広大な湿地管理が行われていたことも分かり、先コロンブス期のこの地域の住民が、大規模に自然に手を加えていたことが明らかにされました。

 先コロンブス期のこうした大規模な集落群は、ヨーロッパからの移住者たちの持ち込んだ病気により、衰退してしまったと考えられます。これらの遺構は、先コロンブス期の歴史の解明にとどまらず、環境保護と持続的な発展、とくに生物多様性を維持することへの教訓を提示する可能性がある、と指摘されています。

 先コロンブス期のアメリカ大陸の住民が、大規模に自然を改変していたとの指摘が増えてきていますが、そうした見解にたいして、開発派を利することになりかねないとして、環境保護派は批判的です(Mann.,2007,P494-495)。しかしこの研究でも指摘されているように、先コロンブス期のアメリカ大陸の住民による環境開発は、環境保護と持続的な発展への教訓を提示する可能性があり、環境保護派にとっても、必ずしも受け入れがたいものではないように思われます。


参考文献:
Heckenberger MJ. et al.(2008): Pre-Columbian Urbanism, Anthropogenic Landscapes, and the Future of the Amazon. Science, 321, 5893, 1214-1217.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1159769

Mann CC.著(2007)、布施由紀子訳『1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見』(日本放送出版協会、原書の刊行は2005年)
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