美川圭『院政』

 中公新書の一冊として、中央公論社より2006年に刊行されました。近年の研究成果も取り入れたうえで、院政についてあくまでも具体的事例でもって概観しており、院政についての一般向け概説書として、かなりよい出来なのではないか、と思います。本書では、私にとって興味深いさまざまな指摘がなされていますが、とくに面白いと思ったのは、鳥羽と崇徳との関係です。

 鳥羽の息子とされる崇徳の実父が、鳥羽の祖父である白河だという噂は、両者の没後それほど時間を経ていない時期に編纂された『古事談』に見え、両者の存命時より存在したと考えられてきました。本書では、この噂が流布されたのは、病弱な近衛の後継が本格的に問題になった時期であり、当時の政治状況からして、その黒幕は藤原忠通だと推測されています。鳥羽がこの噂を信じた状況証拠の一つとして、忠通の父忠実が、崇徳の母待賢門院の男性遍歴を日記に書き残していたことが挙げられています。この問題の実証は困難ですが、本書のこの推測は魅力的です。

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