『興亡の世界史20 人類はどこへ行くのか』

 講談社の『興亡の世界史』シリーズ17冊目となります。福井憲彦・杉山正明・大塚柳太郎・応地利明・森本公誠・松田素二・朝尾直弘・青柳正規・陣内秀信・ロナルド=トビ著で、2009年4月刊行に刊行されました。刊行が大幅に遅れている『興亡の世界史』ですが、本書はその集大成的な役割を担うわけですから、できれば最後の刊行にしてもらいたかったものです。

 本書は、前書き・6つの論考・1つの対談から構成されています。
福井憲彦「はじめに」
第1章・・・杉山正明「世界史はこれから  日本発の歴史像をめざして」
第2章・・・大塚柳太郎「‘百億人時代’をどう迎えるか  人口からみた人類史」
第3章・・・応地利明「人類にとって海はなんであったか」
第4章・・・森本公誠「‘宗教’は人類に何をもたらしたか」
第5章・・・松田素二「‘アフリカ’から何がみえるか」
第6章・・・朝尾直弘「中近世以降期の中華と日本」
第7章・・・青柳正規、陣内秀信、ロナルド=トビ「繁栄と衰退の歴史に学ぶ  これからの世界と日本」
となります。

 第1章は相変わらずの杉山節ですが、その主張には、おおむね同意します。これまでの杉山氏の著書と比較すると、抽象的な提言が多いこともあってか、やや抑制的といった感もあります。第2章は、人口の変動からみた人類史で、とくに目新しい見解はないものの、なかなかよくまとめられていると思います。第3章は、海上世界からの人類史の外観で、技術革新と帝国主義との関連など、短いながらも的確な解説でなかなかよいと思います。第4章は、やや個別の主題に偏った感もありますが、政教分離がどのような背景から生じたのかということや、その他に紹介された史実など、なかなか興味深いものがありました。

 第5章は、今回の論考のなかではもっとも興味深く、アフリカへの先進国の人々の見方に、昔も今も根本的な問題があると指摘されています。その一例がアフリカにおける部族対立の強調です。近年では、ルワンダ紛争のさいに言われていた根深い部族対立が、かなりのところ虚構であることも報道で指摘されています。本書では、ルワンダにかぎらず、アフリカにおける部族対立なるものが、かなりのところ西欧列強の植民地支配上の都合から創出されたものであり、それ以前のアフリカ社会の在り様に、現代社会が学ぶところもあるのではないかと指摘されています。

 第6章は、興味深い史実の紹介もあるものの、やや期待はずれといった感があります。第7章は、今後の日本社会の在り様として、過去の歴史遺産を継承し活かしていくことが提言されていて、その参考として、他の地域の歴史遺産の活かし方が紹介されています。興味深い事例の紹介もありましたが、やや期待はずれでした。不満もありますが、全体としては、この20巻はなかなかよい出来になっていると思います。

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