加熱処理による石器製作

 中期石器時代のアフリカにおいて加熱処理による石器製作が行なわれていたことを示した研究(Brown et al., 2009)とその展望(Webb, and Domanski., 2009)が報道されました。この研究では、加熱処理による石器製作の質・効率の向上が、南アフリカのピナクル=ポイント遺跡では164000年前頃までさかのぼることが指摘されています。さらに重要なのは、加熱処理による石器製作が、72000年前頃までには、シルクリートを用いた石器作製で顕著に認められることで、これは火についての洗練された知識と向上した認識能力を要求し、象徴的思考の広範な証拠とほぼ同時期に出現している、と指摘されています。

 上記報道では、火を計画的に管理できるようになったこの頃に、現代的行動を可能とする知性を現生人類(解剖学的現代人)が獲得した可能性を、この論文の筆頭著者が指摘していると紹介されていますが、それにたいする反論も紹介されています。たしかに、その反論の通り、現代的行動の証拠とみなされる考古学的痕跡が、今後さらに古い時代で発見される可能性は、けっして低くないでしょう。また、ネアンデルタール人の石器ではどうだったのか、という観点からこうした研究が進展することも期待されます。それにより、火の計画的使用を可能とする知性がいつ人類に備わったのか、解明する状況証拠が得られるかもしれません。


参考文献:
Brown KS. et al.(2009): Fire As an Engineering Tool of Early Modern Humans. Science, 325, 5942, 859-862.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1175028

Webb J, and Domanski M.(2009): Fire and Stone. Science, 325, 5942, 820-821.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1178014

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