FOXP2遺伝子と言語能力

 FOXP2遺伝子と言語能力の関係についての研究(Konopka et al., 2009)が公表されました。現在のところ、転写因子FOXP2は、人間の言語能力に関係することが分かっている唯一の遺伝子ですが、対応するチンパンジーの遺伝子とほとんど違いがありません。この研究では新たな実験により、FOXP2の下流の転写標的の活性化には人間とチンパンジーで違いがみられ、この差は両者のFOXP2にあるアミノ酸2個の違いから生じていることが明らかになりました。それぞれのFOXP2が影響を及ぼす遺伝子ネットワークの相互作用の違いが、チンパンジーと人間の脳にみられる対照的な遺伝子発現パターンに反映されている、と考えられます。これらのデータは、人間の系統で起きたFOXP2の進化上の変化が、人間の脳の発生や中枢神経系の病気に直接影響し、また、人間の言語回路の発生に極めて重要な役割を果たしている可能性があるという説を裏付けています。

 ネアンデルタール人も、現代人と同じFOXP2遺伝子の変異を持っていることが明らかになっています。
http://sicambre.at.webry.info/200902/article_14.html
このことから、ネアンデルタール人の絶滅と現生人類の繁栄の違いを言語能力の有無に求めてきた研究者たちには困惑が見られますが、
http://sicambre.at.webry.info/200710/article_29.html
FOXP2遺伝子のみが言語能力を決定しているわけではないでしょうから、ネアンデルタール人に現代人と同じような潜在的言語能力があったか否かとなると、現時点では断言の難しいところだと思います。


参考文献:
Konopka G. et al.(2009): Human-specific transcriptional regulation of CNS development genes by FOXP2. Nature, 462, 213-217.
http://dx.doi.org/10.1038/nature08549

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