デイビッド=ギビンズ『アトランティスを探せ』上・下

 遠藤宏昭訳で、扶桑社ミステリーの一冊として扶桑社より2009年7月に刊行されました。原書の刊行は2005年です。以前、コメント欄でイリヤノファンさんにご教示いただき、面白そうなので読んでみました。
http://sicambre.at.webry.info/200812/article_4.html

 本書の内容は、上記の記事のイリヤノファンさんのコメントの通りなのですが、著者は水中考古学者だけあって、作品の背景となる考古学的見識はさすがであり、下巻の著者自身による解説とともに、歴史・考古学ミステリーとしての面白さを保証しています。本書には、歴史・考古学ミステリーとしてだけではなく、サスペンスアクション・国際政治小説としての性格も濃厚に認められます。とくに、サスペンスアクションの部分はかなり読み応えがありますが、主人公が次々と襲ってくる危難を間一髪のところで切り抜けるという描写の連続は、お約束にすぎるかな、という印象も受けます。

 アトランティスものの作品として、総合的にみて本書はなかなかの良作だと思います。今でも、ヨーロッパやアメリカ合衆国ではアトランティスは創作の格好の素材になっているようで、本書も、そうした文化的背景のもとに出てきた作品なのでしょう。本書で示されたアトランティス黒海説はなかなか興味深いのですが、アトランティス伝承自体は、かなりのところが創作であり、どこか特定の地域の史実を指しているのではないだろう、と思います。とはいえ、創作ものとしてアトランティスは魅力的な素材であり、『イリヤッド』もそうですが、力量のある作家が手がければ、傑作になる可能性が高いのだろう、と思います。

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この記事へのコメント

mmordkknstkr
2010年02月10日 17:15
ここに書くのは適切でないかもしれません。
イリヤッドの人類の禁忌について、今更でしょうが自論を。
1.前提
・作中での事実 クロマニヨン人(以下ク人)は現生人類の祖ではない
・仮説 現生人類はネアンデルタール人(以下ネ人)と接触していない(ネ人を象った像を梟だと勘違いしていた事から)
2.次のお前たち
これを踏まえると、ネ人の「ヒヒを指差し~」はク人へ向けた言葉と言う事になります。
では「次のお前たち」は何者なのか?
それこそが現生人類(ク人よりアフリカを後発した人類)と言う事になるでしょう。
アトランティス滅亡の遠因は「次のお前たち」がク人の前に現れたことで、
ネ人と同じように絶滅することを悟ったク人の絶望、
あるいはその予言を残した山の老人(=ネ人)と言えるかもしれません。
3.タルテソスの地下碑文
宗教者からの転向が多い結社の人間にとって忌諱しつつ神聖なものであることから、
「神話の原型」ではないかと思われます。
おそらくタルテソスを殖民都市にしたフェニキア人の残した訳文が
ルスティケロによってソロモンの壺にいれられアーサー王の墓に隠されている、と言う展開だったのでしょうね
4.人類の禁忌とは
前段までをさらに進めれば、宗教とはネ人が語り、ク人が記したもので、そこに現生人類は関わっていません。
神に選ばれたのはク人で、現生人類ではないのです。
にも拘らず現代に宗教は存在しています。
すなわち現代の宗教は彼らから簒奪したものであると言う事になります。
現生人類には天国の門は開かれておらず、生まれ変わりもなく、ただ生まれ、ただ死ぬ。
「現生人類は神に認められなかったただの略奪者である」
宗教の滅亡が人類の滅亡とイコールでなくなったことが、バチカンが結社を切り離した理由だったのかもしれません。
mmordkknstkr
2010年02月10日 17:16
続きです。長くてすいません。
5.エノク書とヌビア聖書とその原典
天使や超人が数多く登場するエノク書で注目すべきはグリゴリの説話だと思われます。
彼らは人に技術を伝え、妻を娶りますが、穢れたために罰せられ、地につながれます。
ネ人と現生人類は接触していないので、技術を伝え、同化した彼らはク人を指すのでしょう。
おそらくエノク書の原典がヌビア聖書で、ヌビア聖書のさらに原典となる伝説があり、
それを同化により継承したのが紅海西岸に起源を持つベルベル人だ、というストーリーになる予定だったのではないでしょうか。
6.推論、柱の王国と結社の起源について
ク人から技術を得て発展したベルベル人はアフリカ北岸に広がります。
イベリア半島対岸に到った梟の女王率いるアマゾネス族は、梟の女神(=ネ人)が残した言葉を求め
アトランティスへ攻め込みますが、そこで人類の禁忌を知り、部族は崩壊します。おそらく反乱で女王が殺害されたのでしょう。
自らの伝えた技術でかつての同胞を滅ぼし、結果的に自らの部族をも滅亡させてしまった彼らの宗教指導者の生き残りは
人類の禁忌とアトランティスを秘匿する秘密結社を作ります。
おそらく彼らの組織の名は「グリゴリ」ではないでしょうか。
2010年02月10日 23:59
入矢はクロマニヨン人を最古のホモ=サピエンスと言っていますから、作中でもクロマニヨン人は現生人類ということになっていると思います。

人類の禁忌については、どの地域の人類を対象にしているのかな、と疑問に思うこともあります。

世界中の人々にとって禁忌になるような秘密となると、設定が難しいのではないだろうか、というのが連載時よりの私の疑問でした。

正直なところ、人類の禁忌については、風呂敷を広げすぎたのではないか、との印象を受けています。

それだけに、色々と解釈が難しいのではないか、と思います。
しん
2012年01月08日 00:06
ギビンス氏が今年アトランティスの続編発表しました。ジャックが黒海に戻り,ネオナチと決着をつける話。間に四話あるので翻訳はいつになるのやら。私は五作目のトロイで苦戦中。
2012年01月08日 09:26
そうでしたか。翻訳されれば読んでみたいものです。

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